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:思春期の少年の心の世界・2
2011-04-03 07:55:52
By:笛地静恵
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17・この作品の魅惑は、その一コマ、一コマの絵の力にあります。
18・適当な大きさに拡大コピーをして額装し、タブローとして壁に飾っておきたい誘惑にかられます。
19・どのコマでもかまいませんが、たとえば54頁。最下段。画面が増殖する巨大少女の重圧で盛り上がるようです。二次元の画面の表面張力を破って、三次元の世界に侵入してくるような恐怖感があります。圧倒的な密度を持っています。
20・自分を「石ころ」と規定する内向的で繊細な神経を持った少年が、「教室の片隅」から、覗き見た女子の記憶の集積なのです。現実感があります。いつか、どこかで見たことがある風景なのです。
21・画家は、どこかで女子の腕の意外に太い腕の筋肉に驚かされたのでしょう。中央に、少女の盛り上がった怪力を誇る腕を描きます。
22・またあるときには、少女の指の意外な細さに気が付きます。右側には、もやしのように機械から生える指を書きます。
23・またある日には、女子のセーラー服の胸の丸さに驚かされます。左側に二つの隆起を描きます。
24・またあるときには、前髪を垂らした美しい少女の涼しい笑みに、自分に対する嘲笑を感じます。これも、画面に描き込みます。等々。
25・セーラー服を男性の妄想を喚起する究極の最終兵器と位置付けた作家がいました。
26・ここでは、セーラー服が、第二の皮膚のように少年を悩乱する装置になっています。
27・ヌードの氾濫するネットの世界が、日常的に存在する世界では、想像しにくいと思いますが、かつては女性の乳房や陰毛、その下の性器が絶対の秘密として、少年たちの目から封印されていた時代がありました。神秘の領域でした。「理解不能」ゆえに「強力」であったのです。
28・今も、教育や親や学校という周囲の配慮から、少年は、そのような不自由な制限された日々を生きているでしょう。しかし、それゆえに妄想は自由に跳梁していきます。
29・絵の魅惑は少女に留まりません。78~79頁の地下のぬいぐるみたちの街。静謐と神秘と憂愁。ため息がでるばかりです。



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