ウルトラ-M
森林りんご 作品
公開日:1999.05.01
更新日:2010.02.03
■あらすじ
地球は狙われていた。
侵略者は、一人の男を巨大化改造して地球に東京に送り込んだ。一方的に破壊される東京。巨人を食い止める方法はないのか。人類が挑む戦いも虚しく、巨人は圧倒的な力で街を破壊して行く。行く手を阻むのものは、何もなかった。巨人によって人類が滅ぶのは時間の問題だった。
ところが巨人は侵略があまりに一方的に進むのをみて、あるゲームを提案する。この巨人は、改造される前は正義の心を持った勇敢な戦士だったのだ。心のどこかにフェア精神が残っていたのかもしれない。
巨人の提案したゲームとは、地球人の一人に自分と同じ能力を与え、地球を賭けて決闘しようというのだ。そして選ばれたのは、偶然にも巨人の目に留まった一人の少女だった。
とつぜん巨大化させられた少女、漫子には戦いの経験も無く、巨人と対等の力を持ったとはいえ、ただの少女に違いはなかった。なすすべもなく巨人に敗北する漫子。地球も漫子も、絶体絶命のピンチだった。
しかし漫子の一命は、かろうじて助かった。そして親友に勇気づけられた漫子は、特訓して再び巨人に戦いを挑むのだった。
■解説
誰かがやるとは思っていたが、ほんとにやってしまったという感のある作品です。
もともとは、同人誌で描いたネタ(ウルトラA子、ウルトラマン子)ですが、シリーズ化して雑誌に掲載された作品が、単行本 「ULTRA-M」としてまとめられました。ウルトラマンのパロディですが、巨大な全裸の女の子が戦うというのは当時としては前代未聞の設定でした。
同人誌では一話にまとめた読み切りモノでしたが、本作品はシリーズ化された話です。一応読み切りのスタイルはとっています。各話はパロディ仕立てになっていて、地球を狙う悪の支配者と対決する話になっています。サイズフェチな要素を持ったモスラはもちろんのこと、当時流行っていたナウシカのパロディなども盛り込まれています。パロディばかりではなく、純粋な百合ではありませんが巨大美少女対決なども盛り込まれています。
街が破壊されるのも構わず、巨大少女の二人が戦うのは強烈です。空振りした腕がビルを破壊したり、大きく股を開いて倒れ込んだ勢いでビルが破壊されてしまう様が、迫力ある絵で描かれています。背景の雰囲気は、一世を風靡した大友克洋のようでもあり、士郎正宗のようでもあります。
もろくも崩れさる最新技術を駆使した建物は、SF的要素でもありますが、この作品の本質は全くSFとは別なものであることは明白です。破壊的な力を持った彼女達の巨体で崩れる建物は、彼女達の素晴らしい肉体を表現するための小道具です。
怪獣が可愛い女の子だったら、正義の巨大ヒーローではなく巨大ヒロインだったらという思いが、この作品に詰め込まれています。描いた作者は、ちょっと面白そうぐらいのネタだったかもしれませんが、丁寧に描かれた絵は情報量が多く、読み手が色々と妄想する余地がそこに生まれてくるのです。
破壊される街並に立つビルは、沢山の男達の汗と努力の象徴であるかもしれませんし、男そのものの象徴かもしれません。また可愛い女の子を助けたくても助けられない、人類の小ささとも捉えられるかもしれません。街中にそびえ立つ巨大な建造物も、巨大少女達には、邪魔な箱物でしかありません。足下を走る自動車は、おもちゃです。実際、足下にいたタンクローリーが乗務しているドライバーごと、彼女たちのおもちゃとして使役されてしまいます。巨大少女の中に押し込まれる表現は、非常に印象的です。
追加情報として、本作品以外に裸の巨大な女の子が戦う話としては、「戦え!ゆかりちゃん」という作品があります。
■売虎 漫子
本作品の主人公です。
森林氏の描く主人公は、常に顔が命のアイドル系の女の子です。のんびりとした性格で、脇役が引き立ててキャラクターの個性を演出します。この売虎漫子も多分に漏れず、そのひとりです。
強靭なな体と巨大化能力を身につけますが、巨大化した時には着ていた服は弾けとんでしまい、全裸の巨人になります。最初は恥じらいもありますが、打倒巨人のための特訓の後には、戦いの時には恥じらいを隠して戦う事に専念するようになります。
本来、伏せ字にするべきかもしれない主人公の名前は、古い替え歌にある「ウルトラマンの子供」に由来しています。パロディそのままです。
■ななこ
主人公、売虎漫子が巨大化するきっかけを作った巨大宇宙人の妹。ななこを人質にされた為に、兄は地球侵略の先鋒を勤める事になってしまったいきさつがあります。
ななこは人質にされただけでなく、その後、悪の宇宙人に騙されて巨大化した売虎漫子、つまりウルトラマ○子と戦うことにもなります。この雌雄を決する戦いは、当時コミケの会場であった晴海埠頭で行われました。
■ULTRA-M
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