「巨人ガルガンタ誕生」
公開日:2000.04.11
更新日:2004.09.17
■プロローグ
私の名前はキャロル・ヘスラー。化学の博士号を持つだけでなく、その知識は化学分野でも最先端であると自他共に認められています。私は科学調査チームに席を置いて、V-47ビタミンについて研究しています。これは他に無いタイプのビタミンで、普通の人間を超人に変身させる力を秘めています。
ところがV-47は、特定の人にしか効果が現れないのです。私たちの知るかぎりでは、効果があったのは2人だけです。
私たちの任務は、他の人々にも同様の効果のあるビタミンを生成することでした。それが成功したなら、っその新薬で新しいヒーローを生み出すことができ、ブラックシャドーの驚異に対抗することができるでしょう。
私は最初の試薬の人体実験を私の体で試すことにしました。道義的に考えるれば当然であるこの考えは実のところ、私がなんとしても悪を許すことができないという思いから一途に決心したものでした。
決して私は自分の体を若返らせようとか、美しくなりたいと考えていたのでは無かったと申し上げておきます。
いいえ…まったく望んでなかった訳ではありません。正直に言いますと、関節炎の痛みから開放されればうれしいと思っていました。
■あらすじ
キャロルが新型のビタミンをいよいよ服用実験することになった。フェムフォースのメンバーの見守る中、キャロルの傍らにいる助手達に記録をとらせながら、ヘスラー博士は新薬を飲み込んだ。軽い苦しみがキャロルを襲ったが、なんの変化も見られなかった。キャロル本人が失敗だったかと思ったそのとき、彼女の着ていた服を破いて体が膨れ始めた。
キャロルの体は、2mを超えていた。それだけではなかった。キャロルは自制心を失い、人間としての感情を無くしてしまっているようだった。
ミス・ビクトリーが駆けつけたとき、巨大化したキャロルは完全に理性を失っていた。キャロルを必至に説得しようと試みたものの無駄に終り、ミス・ビクトリーはキャロルと力で対決することになった。力ではキャロルにかなわなかったものの、ミス・ビクトリーは機知とスピードでキャロルを気絶させることに成功した。
キャロルを押さえ込んだミス・ビクトリーの周りには、いつのまにか記者達が集まっていた。インタービューを始める者、フラッシュをたいて写真を撮り始める者。そうした記者達の目が突然ミス・ビクトリーの背後に集中した。ゆっくりと振り返るミス・ビクトリーの見たものは、先程よりも一回り巨大化したキャロルの姿があった。
身長が15mにも達したキャロルは、まるで怪獣のように暴れ始めた。混乱する街の人々には気にも留めず、キャロルは建物や車を破壊しながら進んでいく。
誰にも彼女を止めることはできないのだろうか・・・
■解説
AC社の看板コミックであるフェームフォース。そのフェムフォース中の登場人物で、人気のあるガルガンタ登場のエピソードです。
フェムフォースには、これ以前にも巨大女性が登場するエピソードはありました。ガルガンタが最初の巨大女性ではないのですが、このエピソードを境にして、巨大女性を中心とした話がフェムフォースを賑わせるようになります。ガルガンタの人気ぶりが伺えるというものです。
キャロルの身を捧げた人体実験のいきさつには、女性の若さへの羨望の気持ちが見え隠れして面白く書かれています。キャロルが否定すればするほど、その潜在的な若さへの欲求の強さがうかがえるようです。
さて、このV-47というビタミン剤は、WWIIの生物工学者ジョアン・ウィンによって開発されもので、そのエピソードはFemforce #25に収録されています。このビタミン剤の効果が見られたのは、ジョアンとジョアンの娘だけでした。その薬を公然と研究できるようにキャロルは、おそらく必至に裏工作までして、自分がこの新薬の研究をできるようにしたのではないかと思えます。実際キャロルは、この事件の後も正式にはフェムフォースのメンバーには加わってはいません。
その後、キャロルは精神コントロールによってサイズを調整することができるようになります。しかし怒りによってコントロールを失ったりすると巨大化してしまいます。怒りのために巨大化したキャロルは、自制心を失ったガルガンタであり、自制心を失った時は暴れる怪獣に等しい被害を街にもたらします。もちろん自分から巨大化したいときは、いつでも自由に巨大化できますし、そうしたときには女性のやさししさを持った巨人ガルガンタです。
何度か登場するガルガンタですが、キャロルの本心が具象化した姿だと言えます。つまり巨人となったキャロルは、普段科学者たる理性を持って普通の人間サイズに小さくなって生活しているのだと言えるのです。もし彼女が心を解き放つなら、自由奔放に振る舞まうにふさわしい巨大な体、巨人となるのです。巨人ガルガンタを阻むものは、何も無いのです。
■Femforce No. 30
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