石川球太 作品
公開日:1999.05.01
更新日:2004.09.17
■あらすじ
ある夏の暑い日、一人の男が巨大化する。前触れもなく突然巨大化した。男自身なぜ巨大化したのか思い当たる節もなく、ただ驚くばかり。政府もこの巨人の扱いについて、困惑するばかりだった。
当初、男が絶望と悲壮感をその巨大な体で表すのを見て、人々は好奇心とともに同情を寄せていました。でも、この巨大な男が一般社会で生きていくには、厳しい問題を解決していかなければならなかった。
確かに、身長50mある人間の食事だけで、小さな街を維持するのも同様の費用が発生するのだ。それに小さな街が出すのと同じ量の排泄物の処理も重要な問題になっていた。やがて男は、ただ社会のやっかいものとして、公害の元のように扱われる。
マスコミや世評は、そんな巨人を巨人獣と呼ぶようになり、ますます人間扱いしなくなっていった。巨人はそんな自分の存在がいやになり、台風が接近し大荒れの太平洋に投身自殺を図る。しかし死にきれず、静岡県御前崎に漂着した。さっそく自衛隊が警戒に当たった。
人間扱いされず死ぬこともできなかった巨人は、だんだん心がすさんで、とうとう自衛隊と一悶着を起こすことに。自衛隊の戦車は巨人にとっておもちゃみたいなものだった。巨人は自分に対してまったく歯がたたない自衛隊に、小水をあびせるなど悪態をついたが、結局むなしさが込み上げてくるのだった。
大阪釜が崎に出現した巨人女 |
■解説
社会的な角度で真っ向から挑戦した意欲作品。人間とはなんだろうか、巨人が現代で生活するにはどのような問題があるのか、真剣に取り組んでいます。
巨人を都会に生活させることで、社会風刺を滑稽に描こうとしています。現代版ガリバー旅行記ですね。ガリバー旅行記の強烈な風刺は、時を隔てた現在でも多くの作品に見られます。この巨人獣もそうした作品群の中に埋もれつつありますが、先陣を切って登場し、なおかつ社会ブームに発展させた作品として、ひとつのマイルポイントとして見る事ができる作品です。
当時は人間性とはなにかを考えさせられるような作品が好まれていました。この作品もそうした時代を代表するかのように、悲痛な叫びを発しています。同じように現代社会に現れた巨人を捕えた作品として「デビルキング」を紹介させていただいてますが、比較して読むのも面白いと思います。
この作品の結末は、とても悲しいものです。そこには人類を超越した巨人の姿は無く、ひとりのちっぽけな人間として巨人が描かれています。今後、こうした作品はなかなか生まれないことでしょう。
ところで巨人獣は1970年に「少年キング」に連載開始(注)された当時、非常に話題になりました。それだけにこの作品の後で、新しい作品を描くのはとても難しいことだと思います。その後、石川球太氏は何編か作品を描いるがあまり評価されませんでした。
なお巨人獣という言葉はおそらくは、バート・I・ゴードン監督の「WAR OF THE COLOSSAL BEAST」という映画の邦題「巨人獣」で最初に使われたのだ思われます。石川氏も少なからず影響を受けたと思いますが、いずれにせよこの作品が珠玉の一作であることに間違いありません。
注:連載前にまんが王1969年11月号に初掲載
■追加情報
この作品は1998年4月に太田出版より再出版(2400円)されています。全編を読みたい方はこれをお勧めいたします。インタビュー記事も加えての内容は、充実しているので、作品をしっかりと読みたい方にはお勧めです。
100円ショップで有名なダイソーからもダイソーコミックシリーズとして販売されています。こちらは100円とリーズナブルな価格ですので、ちょっと読んでみようかなという方にお勧めします。ダイソーでのみの販売となっていますので、手に入れにくいかもしれません。また、最後のクライマックスがカットされていますので、ご注意下さい。
■巨人獣 ザ・パラノイド
[img]■巨人獣 (ザ・パラノイド)
[img]■巨人獣《第1巻》
[img]■巨人獣《第2巻》
[img]■巨人獣《第1巻》
[img]■巨人獣《第2巻》
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