スピークフード・リトルマン

第36回ちばてつや賞入賞作

杉山凡銃 作品

あらすじ

「リトルマン」という名前で売られている缶詰には、小人が入っている。食用の小人だ。缶切りで開けた缶にから、生きて出てくる小人だ。会話をすることもできる知性をもった食べ物が、このリトルマンという食品だ。小人の味はとても甘く、栄養価も高い人気食品だった。食べ方は、生きたまま丸のみにするのが普通だ。

でも、私は食べることができなかった。

小人自身も食べられるのを望んでいるのだが、私にはどうしても食べることができなかった。ところが、恋人が買ってきたリトルマンの一人が、食べられることを拒否したのだった。それを無理やり食べようとする恋人を私は止め、その小人を助けたのだった。

助けた小人は独立心の強い小人で、小人社会を築くのだと息巻いて同志となる小人を探し始めた。そんな小人がかわいく思えた私は、小人の同志探しを手伝うことにした。しかし他の小人達は皆、人間に食べられることを望み、新たな食い手を求めて私の部屋を去るのだった。

そうしたある日、小人が苦しみ始めた。病気だろうか?

そうではなかった。賞味期限が過ぎてしまったのだ。小人は自分の運命を悟り、食べてくれと私に懇願した。しかし私には食べることはできなかった。

「俺は役立たずなのか…」

その言葉を聞いた私は・・・

解説

どのような動物でも必ず知性はあります。そう、私たちはそうした知性ある動物の言葉が判らないだけで、食べられる側の気持ちを考えずに食肉しています。そういったことを考えさせてされてしまう作品なのですが、深遠なテーマを引っ張り出してきた割にはあっさりとしています。軽快に描き上げている杉山凡銃氏のの感覚には脱帽します。この作品には、どんなコメントを書いても似合わないでしょう。最後の最後まで丁寧に構成された作品に、あふれる才気を感じます。

食事の前に「いただきます」と言うのは、命を頂戴させていただきますという祈りの言葉が起源なのだそうですが、感謝の気持ちを込めて、これからもいただきますと言わせてもらいます。

Published : 2000.05.08
Update : 2004.09.17

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