妖精達は一様に可憐で美しくありましたが、その中にあってひときわかわいらしい妖精の男の子がおりました。しかし、その少年には仲間に言えない秘密があったのです。(本文より)
「どうして私を受け入れてくれないの!?」
幼なじみの妖精の女の子ファラは、その妖精の少年ミルのことがずっと好きでした。でも、ミルはファラの求愛に応えようとはしなかったのです。そして、好きなのか嫌いなのか態度をはっきりとさせないミルに、とうとう怒鳴りつけてしまったのです。
ミルはファラのことが嫌いなわけでは、なかったのです。でもミルのモノは、異常に大きく、とてもファラに受け入れてもらえるようなモノではなかったのです。幼い頃にミルは、他の人よりも数倍も大きなモノを持っていること、それが将来どういう意味を持つのかを知った時からコンプレックスを感じ、そしてそれをずっと秘密にしていました。ファラが怒っていなくなり、ひとりきりになったミルは、自分のモノを抱えながら悩みました。ところが、ひとりきりになったと思っていたミルの目の前に、幼なじみの女の子のカイが立っていたのです。
(みられた!)
声にならないミルの声。ここにいられなくなった。そうした想いが、ミルを別次元に続くという洞窟の前に走らせたのだろうか。ミルはいつのまにか、その穴の前に立っていた。その穴は巨人の国に続いているという。そう巨人の住む国なら、もしかすると受け入れてくれるかもしれない。そうしてミルは、穴の中へ踏み込んだのです・・・
ミルが気がつくと、本の並ぶ大きな部屋の中にいました。奥の方から喘ぎ声が聞こえます。その喘ぎ声の方へと進んでいくと、そこに巨人の女の子が。ミルは巨人の住む国へほんとうに来てしまったのです。
巨人はスカートの間に手を入れ、あまる手を胸に。自分で揉んで悶えていたのです。
(巨人もするんだ)
ミルはその様子に見とれ、うっかりと本を落としてしまいました。巨人に見つかったミル。どこにも行くところがないミル。巨人の女の子、藤田美咲とミルとの不思議な生活はこうして始まったのです・・・
注:カットは全て「COMICラッツ《1994年3月号》」カラーページより。単行本は本編白黒のみ。
解説
ミルの考え方は、体に関するコンプレックスによる部分が大きく占めています。そのために肉体関係が相手を満足させる方法であると勘違いをします。そのあたりが、実にうまく表現されています。満足の度合いや好き嫌いは体と関係ないのですが、そうと気がつくには時間が掛かるものです。最近ではそういったことを感じ学ぶべき思春期に、セックスの虜になってしまったり、自分という個性をじっくりと見つめる時間がなかったために、心のバランスをとれないまま大人になる人が多いようです。しかし幸いなことに、この物語の登場人物らは友達に恵まれました。
これが普通の登場人物なら、ありふれたトレンディドラマ仕立てのラブコメになるところでしょう。また、完全なファンタジー世界の話なら、リアリティのないラブコメになったことでしょう。この作品には、いままでとはひと味違うものを求めながらも、無理なくリアリティを手にすることが出来るまれにみる成功例と言えるのではないでしょうか。マンガにおけるエロティシズムとは、一種のファンタジーだと言えますが、エロティシズムとファンタジーを見事に融合させて見せてくれたのが、この作品であると言ます。
この作品を収録した単行本は、成人指定になっています。当然のことながら、性的なシーンは惜しみなく描かれています。しかしこの物語には救いがあって、そうした救いを背景に、淡々と進む構成が、独特の落ち着いた優しい雰囲気を作り出しています。この作品を読むことで、きっと心に何かが残ることと思います。
Published : 2001.08.23
Update : 2004.09.17
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