デビルマンレディー

原作:永井豪

あらすじ

モデルという一見派手やかな職業とはうらはらに、影の多い不動ジュン。ある日彼女の元に、一人の女性が現れた。彼女はジュンを自宅から連れ出した。不思議なことに初めて合う彼女に、ジュンは従うようにして車に乗った。ジュンを乗せた車はとある港につき、謎の女は、そこに建つ倉庫の中へとジュンを連れていった。

その倉庫のまん中に、一人の男が縛られていた。やがて男はジュンの目の前で、恐ろしい姿に変身し、拘束を断ち切るやジュンに襲い掛かってきたのだ。

ジュンの命が脅かされたその時、ジュンの体に変化が訪れた。デビルマンが誕生したのだった。デビルマンとなったジュンは、まるで戦いを楽しんでいるかのように笑いを浮かべながら、圧倒的な力で相手を引き裂いていった。やがて怪物を倒したジュンは、元の女性の姿へと戻ったのだった。

自分の変身に驚いたジュン。アスカと名乗る謎の女は、そんなジュンに過酷な命令を押し付けてくるのだ。やがてジュンは命令ではなく、ジュンの持つ優しい心から、倉庫で変身した男のようなビーストと戦うことになっていくのだった。

人類の存亡をかけた戦い。ジュンの悪魔的な力は、人類の脅威をことごとく蹴散らしていく。それでも人として生きていきたいと願うジュン。しかし、そんなジュンに対して、その恐ろしい姿を見た人々は、ジュンに恐怖の視線を浴びせるのだった。やがて、その戦いは思わぬ結末へと進んでいくことになるのだった・・・

巨大化するアニメ版

この物語は永井豪氏のデビルマンが根底にあることは、ここで改めて言う必要もないかもしれません。そのデビルマンですが、原作マンガでは巨大化しませんが、アニメ版の方は巨大化するのです。デビルマンと同様、デビルマンレディーも原作マンガでは巨大化しませんが、アニメ版は巨大化するのです。もっともデビルマンレディーは「デビール」とか「デビルウィーング」と叫んだりはしません。今回のアニメ版デビルマンレディーは、原作同様リアルに迫ってくるのです。

原作のハードコアな面白さに、デビルマン時代のアニメ版への思い入れがミックスされてできあがったのが、このアニメ版デビルマンレディーなのかもしれません。映像として迫力ある巨大化した悪魔。ただ絵的な面白さだけでなく、巨大化の必然性を与えられたストーリー性も以前のデビルマンとは格段の違いを見せています。

ジュンがデビルマンに変身するキーとなるのは、生命の危機を感じた時。その時彼女は、筋肉質の体格で2mを超える身長へと変身します。デビルマンへと変身した彼女の体をおさめることのできなくなった服は裂け、全裸の姿をさらすことになる。この辺が永井豪タッチ。やはり女性は全裸でなければ。

それでもなお生命が脅かされる時、さらなる変身を遂げるのです。彼女の体はさらに巨大化し、皮膚の色も肌色から緑がかった青へと変化します。ちょっと超人ハルクに似てますね。もちろんこの色は、デビルマンで使われていたあの色です。

ジュンは変身した自分が、人間から遠ざかるようで変身を嫌います。特にギガビーストとなったあとの落ち込み方は半端ではありません。

悪魔の象徴するもの

デビルマンと呼ばれる種。獣としての自分と向き合うことができ、自分という存在の価値に悩みつつ、それでも強く生き抜くことができる種。それがデビルマンの本質なのかも知れません。

この物語を悪魔対神の図式で見てしまうのは、あまりにも単純でしょう。デビルマンは悪魔の形こそしてしていますが、物語では誰も悪魔とは呼びません。そのあたりに、この物語のメッセージ性が現れています。また、悪魔とか神とかは絶対的なものではないというのが、永井豪の流儀。運命、性、命、肉体、精神。そういったキーワードが、獣という形で表現されているのかもしれません。エロスとタナトス。喜びと悲しみ。希望と恐怖。善と悪。悪魔と神。対となるものの象徴が、様々な形で人間を軸に描かれています。そもそも、そういったものは、人間の価値観の上に存在するものなのです。

人類とは何でしょうか。人間種としての繁栄。犠牲の上に成り立つ平和。こうしたものも全ては人間の価値観から生まれでてくるのではないでしょうか。だからといって、そういったものを無視するのは、人間としての価値を捨てることになるのです。人間の価値。そうしたものに真っ向から向き合えない人には、この物語がきっと馬鹿馬鹿しく感じられるかも知れません。常に正しいと信じる心よりも、常に正しくないかもしれないという気持ちを持ちながらも、強く生きるべきなのかもしれない。悩みがあるから人としての価値がある。それだからこそ、デビルマンが人間的であると感じられる。そんなメッセージをこの物語から感じ取ることができます。

Published : 2003.01.14
Update : 2004.09.17

The Devil Lady - The Complete Collection

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