テンシノタマゴ

蜂矢マコト作品

あらすじ

「幸運を呼ぶタマゴさ…」

大通りの道ばたの露店。アクセサリの中にそれはあった。女性運が上がるのは無いかと聞いて、露天商の男が取り出したのは、幸せの卵と書かれた札が貼ってある卵だった。代金はいらないと言う。青年は持ち帰る道がてら卵に願いをかけた。

「彼女ほしいっ」 その時、手の中でかすかな声を青年は聞いたような気がした。

部屋に戻った青年。卵に貼られた札を剥がしてみた。そこには、小さなひび割れが。そして軽い卵の中で何かが動く気配を感じた。気味が悪いがそれ以上に好奇心が勝った青年は、そっと卵を割ってみた。

中には手のひらに収まる小さな女性。その女性は、大きさを無視すれば、子供などではなく成熟した女性に見える見事なプロポーションを持っていた。願いが叶ったのか?

どうやら水を欲しがっているらしい。声が出ないようである。青年はとりあえず冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、女性の前に持ってきた。持ってきたが、どうやって水を与えようか悩んでいた時、青年の手からペットボトルが滑り落ちた。女性の真上へと落ちるペットボトル。不視儀な事に、今は無くなってしまった卵の殻があるあたりで、ペットボトルは女性と相対的にちょうど良い大きさに縮んだのだ。そして女性の手に…

青年はおそるおそる手を伸ばす。今は無き卵の殻に触れた瞬間、ペットボトルと同じように女性と同じ大きさに縮んでいた。目の前には女性。見渡すと巨大になった部屋。たった二人きり。男と女。それは甘い甘い時間のはじまりだった。そしていつしか夢の世界に青年は入っていった。

次に青年が目を明けた時、そこにはさっきの女性がいた。巨大になって・・・

よくある話なのか

他力本願指向の人がその指向ゆえに罰を受けるような教訓的物語をよく目にすることがあると思います。このサイトを訪問されている方は、SFやファンタジーの好きな方ばかりだと思います。そうした方は、この物語のエンディングが途中で想像できてしまうかも知れません。そういったもの足りなさが、この作品にはあります。

しかしそうした物語を嫌って、やたらとどんでん返しされるのもうんざりします。むしろ、この作品のように素直に描いていながら、独自性を出す方が好感が持てます。それに、こうしたパターンは以外と少ないものです。ただ印象に残るのです。だから、よくある話のように思えるのです。

では何故印象に残るのでしょうか。それはあなたが教訓を求めているからでしょうか。それとも教訓を嫌うからでしょうか。どちらにしても、印象に残る作品であることに間違い無さそうです。

Published : 2003.01.23
Update : 2004.09.17

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