1964年から放送されたこの作品は、当時の人気アニメでした。エイトマンの後を次ぐ番組としてTBSによって企画され、エイトマントと同じTCJ(現在のエイケン)が制作しました。マンガは、雑誌少年サンデーに連載されていましたが、いわゆるメディアミックス企画で、マンガ連載とテレビ放映は同時に行われました。マンガ作品の資料がないために内容的に、マンガとアニメで同じ物であったかは判りませんが、当時はマンガ、アニメともに相当の人気であったことは間違いのないところです。
SFというものは子供が一番に理解する力があると言われています。SFの好きな子供であっても大人になるほどにSFから疎遠になり、再び会う機会があっても、なかなかのめり込めないと言われています。おそらくこのサイトに訪れる方の多くは、SFマインド豊かな心の持ち主たちであると確信しています。もしかすると、そうしたSFにときめいた記憶の中に、このスーパージェッターがある方も結構多いのではないでしょうか。子供向きに制作されたSF作品ですが、実はかなりハードSFの要素をふんだんに盛り込んだ作品だったのが、このスーパージェッターでした。タイムパトロール、パラライザー、反重力ベルト、通信機をかねた腕時計…タイムストッパー。そしてマッハという単位が音速であることを教えてくれた流星号。そうした当時耳慣れないものを判りやすい形で子供に教えてくれたのが、筒井康隆氏と久松文雄氏であったのです。
アニメの脚本を担当したメンバーは錚々たるもので、筒井康隆、豊田有恒、半村良、眉村卓、辻真先、桂真佐喜などの作家や脚本家の名前が並びます。その中でも筒井康隆という名前に目がいきます。筒井康隆氏は、当時新進気鋭の作家で、この作品の印税によって独立し本格的な作家活動に入ることができたということを何かのインタビューでご本人が語っていました。彼は突拍子もないことを思いつく作家で、また他の機会にご紹介することもあると思いますので、今回はこの辺で切り上げておきましょう。
マンガを描いていたのは、久松文雄氏。当時すでに人気のあった久松氏ですが、このスーパージェッターで人気を不動のものにした感があります。彼の作品はキャラクターに魅力があるのが特徴で、この作品の登場人物達もその例外ではありません。ジェッターもさることながら、脇役のひとりひとりの性格描写によって、実に生き生きとしたキャラクターが描かれていました。そういえば、同じ久松氏原作のアニメで、スーパージェッターの後に制作された「冒険ガボテン島」という作品がありましたが、確かガリバー旅行記をネタにした話があったと記憶しています。どなたかご存じの方がいらっしゃいましたら、教えていただけないでしょうか。
ところで、ここでご紹介させていただきましたカットは、放映時の物ではなくてカラー着色された物です。白黒作品として制作され、放送時も前編白黒でしたが、後にアメリカへ輸出する話があった際に、26のエピソードをセレクトしてカラー着色を施しました。この作品もそうしたカラー着色を施されたエピソードのひとつです。
さて、このエピソード。いくつか興味深いところがあります。縮小された物体は、もとの重量のままであるというのです。なるほど、質量保存の法則はここに生かされているという訳です。さすが、SF作家の考えることは違いますね。でも、ちょっと待ってください。ということは、貨物船の重さは数万トン。それが潜水艦の中にあるのですから、もしこの潜水艦が比重による浮力を利用しているのなら、海面に浮かび上がるどころか海底まで真っ直ぐ沈んでしまいそうです。海底にまで沈んでクローラーなどで走り回ったら、それこそ海底軍艦…失礼。いや、きっと未知の方法で、潜行したり浮上したりできる潜水艦に違いないのでしょう。
でも、まだ疑問が残ります。もし重量に変化がないのでしたら、最後に方で水島かおるさんは空に向かって浮き上がるのではないかということです。あ? オチが判っちゃた方ごめんなさい。そ〜なんすよ。実は彼女に身にとんでもないことが起きるんです。まさに見てのお楽しみです。
21世紀を迎え、30世紀まであと900年ほど。この作品に登場したものは、みんな実現されているのかもしれません。そして残念ながらもこの作品が予言したとおり、30世紀にも悪人が存在するのでしょうか…