シンウェイという美しい小さな村が中国にありました。その村にリックビーンという男の子とメイメイという女の子が住んでいました。二人は仲のよい友達でした。その証拠にリックビーンのかぶっている帽子は、メイメイの作った帽子の中で一番の出来映えのものなのです。
幸せそうな二人でしたが、リックビーンには悩みがありました。彼の体はとても小さく華奢で、メイメイとはつり合わないのではと、悩んでいたのです。そんあある日、リックビーンは漢方薬屋のフォン家のお店を訪ねました。お目当ては体を大きくする薬でした。フォンは、リックビーンの小さな体を診て彼にぴったりの薬を調合しました。それこそが、リックビーンの望む体を大きく強くする薬だったのです。フォンは、一度にたくさん飲まないように注意をしてリックビーンに薬を渡しました。
リックビーンはいつも人の話をちゃんと聞きませんでした。母の話ももちろんフォンの話もちゃんと聞かなかったのです。リックビーンはフォンの店を出て人気のない村はずれにやってくると、薬を全部一気に飲んでしまったのです。 するとどうでしょう。リックビーンの体は、みるみる大きくなっていきました。今までの何倍も大きく大きく、どこまでも大きくなっていくようでした。慌ててきつくなった服を脱ぎ捨てました。
「きっとメイメイがこんな姿を見たら、大笑いするか悲鳴をあげるかのどっちかだ!」
彼はこんな姿になった自分をメイメイに見られたくありませんでした。そこで村を出てどんどん歩いていきました。そしてとうとう海に出ました。
海に出た彼はメイメイからもらった帽子を眺め少し落ち着きをとりもどしました。その帽子は彼の親指がかぶるのにちょうどよい大きさでした。彼は大事な帽子をかぶることができなくなってしまったのです。大事な帽子をなくさないように、いつのまにか長く伸びた鬚に結び付けました。そして走り出し大きくジャンプすると暗く深い海の中に飛び込んだのでした。
リックビーンは深い眠りについていました。潮の流れは眠りについた彼を優しく運んでいきました。そしてなんと彼が目をさました時、南の島にいたのでした・・・