山野一とは何か。
それは漫画を知る物ならば必ず突き当たる命題だ。
この書もその解を得るための一助となる傑作の一つ。

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貧困魔境伝ヒヤパカ 新装版 コミック – 1999/12/1
山野 一
(著)
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大学教授と講座の学生(or秘書)で代議士の 娘である、まさえが、不況の実体を調査するため貧民地区を訪れる。 とりあえず近くの工場で話を聞くと、あたり一帯はゴミを埋め立てた土地 のため、ポンプで絶えず水を汲まないと海水が浸み出してくるという話を聞く。
- 本の長さ174ページ
- 言語日本語
- 出版社青林堂
- 発売日1999/12/1
- ISBN-104792603145
- ISBN-13978-4792603144
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登録情報
- 出版社 : 青林堂 (1999/12/1)
- 発売日 : 1999/12/1
- 言語 : 日本語
- コミック : 174ページ
- ISBN-10 : 4792603145
- ISBN-13 : 978-4792603144
- Amazon 売れ筋ランキング: - 327,357位コミック
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- 2016年9月28日に日本でレビュー済みフォーマット: コミック (紙)Amazonで購入
- 2016年10月22日に日本でレビュー済みフォーマット: コミック (紙)Amazonで購入私は子供のころから、暇を持て余すとよく近所の古本屋を巡っては、古い本や漫画を読み漁ったりしていた。古い本と言うのはどれも甘く良く、上品な匂いがして、その空間にいるだけで私は至福の時間を過ごすことができた。最近の本は寧ろ変な匂いがするので嫌いだった。
だが、匂いは良いのだが、昔の漫画や小説にはエログロが多く、とんでもない珍作を読んでしまうこともしばしばあった。そんな中で特に忘れられない漫画がある。
それは、聾唖者の女性が、自分が振った男とその友人に、腹いせに犯され殺されどぶに捨てられると言うものだった。
私は、その下劣で人間性の欠片も見当たらない内容や絵もさることながら、その作品の奥底にあるものを心底嫌悪した。
それは、便器に名前を書いたものを「現代アートの出発点」と言い切る者に対する嫌悪感とよく似ていた。当時小学生だった私にとって、便器は便器であり、汚物は汚物だった。
その作品の名前も作者も覚えてないが、その嫌悪感は、それから15年以上たった今も私の腹の内でとぐろを巻いており、薄まる気配がない。
最近暇つぶしにネットを見ていて、その漫画の作者の名前を知った。
それは山野一と言う漫画家で、結構有名らしい。しかも一部評論家から絶大な支持を受けているらしい。評論家と言うやつらは、そのジャンルに問わず、世間の価値観を軽蔑するあまり、便器に芸術性を見出したりする者だと言う事は小学生当時から知っていた。
とは言え、私も、もう良い大人である。小学生の頃に持った感想とは違う感想がもてるかもしれないと思い、Amazonで山野一を購入した。
15年前には100円の棚に無造作に置いてあったのに、今は定価より高く売ってるのだから世の中は良く分からない。
読んで見れば、うーん、大人になってから改めて読んで見ても、やっぱり下劣で人間性の欠片も無い内容だ。ただ子供の頃と違って、この過激さに衝撃を受ける事も無かった。もっと凄い鬼畜漫画やエログロ小説、映画を観ているからだ。
お嬢様がスラム街の住人の慰みものにされたり、紙芝居のじいさんが子供たちにリンチされたりと、一回読んだだけなのに、記憶の中の漫画と少しも違わなくて驚いた。昔読んだ漫画や映画は、大人になってから見返すと、必ず新しい発見があるものなのに、ここには何もなかった。昔読んだものそのままの、似たり寄ったりの鬼畜漫画が並んでいる。
しかしこのヒヤパカに収録されている「荒野のハリガネ虫」は、明らかに私が当時読んでいない山野一作品だった。
内容は、金持ちの子供が夏休みの自由研究に「貧乏人の観察」を選ぶと言もの。
金持ちの坊ちゃんは、貧困地区の中でも一番貧乏そうなアパートの一室に住んでいた男に会う。
彼はゴキブリやハリガネ虫、果ては人間を食べて生きていた。
使用人を犯して殺す男に、坊ちゃんは言う。
「貧乏人は浅ましいものとは聞いていましたが・・人間の所業とは思われないですねえ。」
「え、いやあ。そうハッキリ言われると照れるなあ。いやね、私も浅ましいとは思うんですがね、貧乏もここまでくるとなんか楽しくなっちゃってどーでも良くなっちゃんですよ。」
「人間の尊厳とか良識とかね、びた一文にもならないものは糞と一緒に便ツボにひり出しちゃいましたよ。以降は畜生の如く、もっぱら欲望に忠実に生きていると、こう言う訳なのです」
ゲスの極みなどと言う甘っちょろいものではなく、最早男は人の皮を着た獣だった。
しかし、家政婦を犯して殺して、文字通り喰らっている男を見ても坊ちゃんは眉を顰める事も無く平然としている。
「『世界は不条理であり、生命は自立した倫理を持つべきだ』かのニーチェも言っています。」
と言って男の所業をみながら納得している様子。
ニーチェがこの漫画を読んだら呆れかえっていたろう。
私はこの、人間性の欠落したような男の退廃的な論理に、同調はしないものの、やけに腑に落ちるものを感じた。今まで蠢いていた腹の底の嫌悪感が消えて、妙にすっきりした気持ちになった。
15年越しの便秘が解消されたかのような、晴れやかな気分だった。。
その原因は、この山野一と言う作家に対して、自分なりの解釈の仕方が見つかったからだ。
この山野一と言うのは、いわば、荒野の思想家なのだ、
荒野とは、社会のつまはじき者達を受け入れる最後の故郷であり、負け犬どもの流刑地だ。
この世界の中で、人として生まれながらその当たり前の幸福から最も遠ざかり、失うものさえ得られず、何にもなれない人々は、この漫画を読んで、堕ちる所まで堕ちた自分達を「真の意味で自由なのだ」と納得させるのだ。
決して希望を得られない人間に希望を持てと言う事は、際限のない苦痛を与える事に他ならない。人としての幸福や希望を諦める事こそ、時として人を人生の苦痛から解放させる。その諦めが思想に基づいていれば、そこに人としての尊厳すら生まれる。
逆説的に言えば、人として尊厳を自ら捨てる事で初めて、男は人としての尊厳を得るのである。
鬼畜も突き詰めれば、思想になりえる。そしてその退廃的な思想にしか救えない人々がいる。
ならば、この漫画を軽蔑することなど誰にも出来ないしするべきではない。
とは言え、荒野で生きるつもりのない私にとって、この漫画を絶賛する事も出来ないので、☆5つは不可能である。そう言った評価を否定するつもりは毛頭ないが。
荒野を脱出する希望を捨てるほど、私は潔くない。
そして結局の所、山野一先生自身も、何時までも荒野の思想家でいたわけでもなく、今は可愛い育児漫画を描いている模様。
アルベール・カミュ曰く、「希望は回避できない。」のだ。
- 2013年11月14日に日本でレビュー済みフォーマット: コミック (紙)Amazonで購入今ではまず世に出せないであろうと思われるヒドい(褒め言葉です)作品のオンパレードですが、中でも「荒野のハリガネ虫」のさわやかなまでのぶっ飛び方は最高です。
人間の尊厳などというものは、人類がその歴史の中でひねくりだした理屈の一つに過ぎないということを、これほど鮮やかに描いた表現作品はあまり多くないと思います。
ほかにも鬼畜系という言葉がぴったりの作品群が並ぶ中で「侏袢の家」はファンタジックでリリカルささえ感じる異色の作品。
「一人でも多くの人に読んでほしい!」とは口が裂けても言えませんが、お好きな方にはたまらないであろう作品集。
当然、絶版で再刊行はまず無理でしょうから、中古品で入手するしかないでしょうね。
- 2016年7月16日に日本でレビュー済みフォーマット: コミック (紙)89年12月に『ヒヤパカ』として青林堂より刊行され、99年12月に同社より『貧困魔境伝ヒヤパカ』として再版されたのが本書。
「本屋大賞」を始め「ベストセラー」を売り文句にした商業作品がいかに無害で平凡としたモノかと錯覚する程インパクトのある鬼畜作品集。
凄まじい内容のために絶版となっているが本当に読まれるべき漫画と確信が持てる。
人間の負の部分やダークサイドを面白おかしく描いている作品が並ぶが、
その主人公への仕打ちが余りにも徹底してるので逆に心地よくなってしまう。
特に前半の作品が凶悪すぎる。
「人間ポンプ」は主人公達の転落というより墜落レベルの落っこちっぷりに苦笑いをし「在日特殊小児伝きよしちゃん-紙芝居の巻-」の終盤の凄惨な仕打ちに身震いし「GOGOやくただず」の救いようのない役立たずっぷりにどこか自分と重ねて滅入る鬼畜な3段構え。
しっかし、本当に面白くてカラッと突き抜けた鬼畜系漫画はマイナーに成らざるを得ないのだろうか?
- 2010年5月16日に日本でレビュー済みフォーマット: コミック (紙)著者3冊目の単行本です。最初に出版されたのは1989年で、本書は後に出た新装版です。貧困・ダメ人間を扱った鬼畜漫画がメインとなっている。本書にこめられた貧乏人(または人間そのもの)に対する悪意は、全山野作品を通じてもトップクラス。よくこんなもの描けたなってのと同時に、よくこれが出版できたなとすら思わされます。
自分が最も好きなのはダメ人間を扱った作品で、「きよしちゃん 紙しばいの巻」「GOGOやくたたず」とか、なんかちょっと身につまされる感じがするんですよね。「荒野のハリガネ虫」の、吐き気をもよおすような醜悪な貧乏人の生態とかも凄いなあ。
「ハネムーン」は超貧乏臭いカップルの新婚旅行を描いたもので、旦那の浅ましさと嫁の不細工っぷりといったらありません。嫁は最後うんこ撒き散らすし、嫌な気持ちになること請け合い。
「荒野のガイガー探知機」は、核戦争後たった1人生き残った極悪人が大日如来に救済されるという物語で、山野先生独特の宗教観が興味深い。「星の博士」も傑作です。(自称)博士の狂気のキャラクター、うさんくさいインテリ臭漂うネームが素晴らしい。
<収録作品>
「人間ポンプ」
「きよしちゃん 紙しばいの巻」
「GOGOやくたたず」
「ビーバーになった男」
「荒野のガイガー探知機」
「ハネムーン」
「パチンコのある部屋」
「旅情」
「荒野のハリガネ虫」
「星の博士」
「押し入れの女」
「侏儒の家」
「太陽とダリヤ」
「のうしんぼう」
- 2005年1月29日に日本でレビュー済みフォーマット: コミック (紙)内容はかなりきつめの鬼畜系です。
ただひたすら人間のダークサイドにスポットをあて、救いのない結末へと導きます。
でも、その世界観がかなり徹底されているからでしょうか?理由は良くわかりませんが、
何度も何度も読み返してしまい、しまいには癒されてる自分が居ました。
人にもよるかもしれませんが、心地よい「後味の悪さ」を約束してくれるような気がします。
冒頭の「人間ポンプ」は、安部公房の「砂女」という小説とシチュエイションが似てるそうです。
ちなみに私はこの時期の山野さんが一番好きです。絵も今の絵とは違う意味でPOPです。
- 2004年11月8日に日本でレビュー済みフォーマット: コミック (紙)繊細な文学青年としてデビューした山野が、鬼畜系特殊漫画家に成長していくプロセスを生々しく見る事ができる珠玉の短編集。80年代後半に描かれた作品群と思われるが、詳しい初出などは掲載されていない。少年時代から、つげ義春、蛭子能収などに傾倒していた山野は、彼らの作風を模倣しながらも確実に自らのスタイルとテーマを確立していく。この後、山野作品を貫く「なぜこの世に悪や悲惨があるのか」という問いはこの作品集から始まったとも言える。山野とヒンドゥー文化との関連を指摘する人は多いし、彼自身、最近の作品やCGにマンダラやヤントラを素材として用いたりしているが、その根底にある問いはむしろキリスト教の「弁神論」と呼ばれる分野に近い。この世の悪や悲惨の由来を問う問いは、創造神が救済者でもある一神教においてのみ意味があり、創造神と破壊神が分かれているヒンドゥー文化では問われる余地すらないはずである。奇しくもこの作品集のあとがきには、彼が幼い頃教会に通っていたという記述が見られる。鋭すぎる感性を持った幼子が、牧師の説くような神の国とは正反対の様々な悲惨を目にし、その現実に叩きのめされ屈服した挙句に出来上がったのが本書ではないだろうか。20代にしてそんな諦念に辿り着いてしまった山野の笑顔は、おぼっちゃまに声援をおくる『荒野のハリガネムシ』の主人公のように、なぜか明るい。