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アルケミスト・パニック


天獅子悦也 作品


公開日:2000.04.30
更新日:2004.09.17


あらすじ

今日もいい女を見つけてはナンパを仕掛ける力哉。しかしいつもと同じく無惨にも失敗。原因は力哉の背の高さだ。力哉の好みは背の高いグラマラスな女性。なのに力哉ときたら、160cmそこそこの背の高さなのだ。そんないつもの様子を端から見ている者がいた。幼なじみの麻美だ。

「俺はグラマー美人がいいんだよ!麻美みたく洗濯板じゃなくな!」

そう言って粋がり、麻美に突っ張ってみせる力哉。その二人の目の前に、手のひらサイズの女の子が現れた。そしてその女の子の後ろには高家が立っていた。

高家は、由緒正しき錬金術師の家系。そして手のひらサイズの女の子は、高家の作ったホムンクルス(人造人間)であるというのだ。しかも、どのような大きさでも、どのようなタイプでも望み通りに作り出せるという。それを聞いた力哉は、早速自分好みの女の子を作って欲しいと高家にせがんだ。これを聞いた高家自身も興に乗って、さっそく人造美女を作り出す準備に取りかかった。

なんとなく面白くない麻美。麻美は力哉が自分以外の女性のことで、盛り上がっているのが気に入らないのだ。そこで麻美は高家に、人造美女を作るにあたり、ひとつ注文を付け加えたのだった。

さて、準備が整い、最後の仕上げ。実際に人造美女を作るために広いところに出た。高家は理想のタイプを念じるように力哉に言うと、呪文を唱え、そして試験管の中に収められた薬品を一気にまいた。すると辺り一面に、もうもうたる煙が立ちこめる。やがて、煙が消えるとそこには、身長200m、スリーサイズが上から120m80m130mの超巨大なグラマー美女が現れたのだった。

好み通りのプロポーションではあるが、あまりにも巨大。まさか巨人になるとは予想もしていなかった力哉。実は巨人を望んだのは、力哉に手が届かないようにするための麻美の願いだったのだ。しかし麻美にも予想できないことがあった。やがて目を覚ました巨人が立ち上がると、そこには巨大な麻美の顔が・・・


解説

天獅子悦也氏は、こびとを登場させた作品をひっさげてメジャーデビューしました。その際に、編集サイドから「こびと」という台詞の変更を求められたというエピソードが有名です。今度はそのリベンジでしょうか、巨人ネタで迫ったのがこの作品です。

人造人間でありながらクローン技術で巨人を作ってしまったかのように、巨人にオリジナルの記憶や性格が継承されている点です。人間では無いが、人間のように情緒豊かな性格を持ち、そして考え行動する。そうした存在を人間と区別することは、とても難しいことです。この作品の場合、巨人ですから人間とは明らかに区別できますが、作者の優しさからでしょうか主人公らは人間と同じように接します。

そうした作者の優しさは、結末にも現れています。クローンの消滅を願いながらも、自分の分身へのいとおしさ。そうした主人公の思いを同時に満たす結末。丸く収まった結末は少し強引ではありますが、作者の優しさが伝わってくる作品です。


掲載情報

少年サンデー SPECIAL No.1

[img]
発行:小学館
発行日:1988年8月22日
雑誌コード:雑誌20669-8/23
定価:380円
サイズ:B5・平綴


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