光山勝治 作品
公開日:2007.08.03
更新日:2007.08.03
■あらすじ
デビットはフェリシアを愛していた。もちろんフェリシアもデビットを愛していた。二人はいつもと変わらぬ愛の営みを楽しんでいたが、フェリシアの体にいつもと違う何かをデビットが気がついた。
「フェリシア、君は・・・」
「そう・・・もう三ヶ月よ。」
デビットを驚かそうとフェリシアは、子供を身ごもっていたことを黙っていたのだ。しかしデビットは、いぶかしんだだけだった。何故なら、デビットは無精のはずだったからだ。
デビットは自分の子供であるはずが無いと思ったが、フェリシアが不貞な女であるとは到底信じることはできなかった。しかし自分の子であるはずがない。デビットは混乱した。
悩み抜いたデビットは知り合いのバルトリン博士に相談した。
折しもバルトリ博士は物体をミクロ化して体内に入る研究を完成していた。それを知ったデビットはフェリシアの体内に入って自分の子供であるかどうか調べたいと言い出した。しかしミクロ化した人間が、別の人間の体内で活動することは、大きなリスクが伴うのだ。結局デビットの熱意に圧されバルトリン博士はデビットと供にフェリシアの体内で直接子供を調べることにしたのだった。
■解説
ミクロの決死圏のパロディです。これほどまではっきりと判りやすいパロディは他に類を見ないでしょう。
縮小設備や縮小プロセスそのものは、映画のままと言っても良いほどに再現されています。映画の面白さをそのまま取り込んでしまっています。その先に待ち構える冒険の場所が違う事が、どれほど意味のあるかを見せつけるかのごとく、縮小プロセスのシーンは映画のままです。
その冒険の場所は、作品でははっきりと描かれていません。しかし、これほどまでに明らかな展開も無いので、想像するまでも無く女性のアソコなのです。そこに挿入される注射器や、注射器の先端から液体とともに女体の奥へと発射される探査船プロテウス号。全ての象徴するものが、あからさまであり解説も不要なほどです。
プロテウス号は縮小されたスタッフそしてデビットを載せて、女性器より子宮に向かいます。体内の描写ですが、あくまでも映画のフィーリングをそのままに描くことを目指しているようです。途中、精子の攻撃を受けたり他にも思わぬ障害に出くわしますが、よくよく考えてみるとこの精子は、デビットのものであるに違いないのです。デビット自身から生まれでた精子に、デビットが生死の危機に見舞われるという訳です。なんと申しましょうか、デビットにとっては身から出た錆と言えるでしょうが、こんなことに巻き込まれた他のスタッフにとってはいい迷惑です。
ところで、これほどまでに文明が発達した未来世界でありながらDNAによる鑑定はなかったのかといった疑問はもっともなのですが、この作品が描かれた頃はDNAの分析はまだ始まってなく、DNA鑑定に言及したSF作品もほとんど無かった背景を考えると、致し方ない事でしょう。
ところで、デビットは自己中心のろくでもない奴ですねえ。
■謝辞
この本を快く寄贈してくださった方に感謝いたします。
■毒美人
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