SFアンソロジー「ワープin VOL.3」より
樹ただし作品
公開日:2000.02.03
更新日:2004.09.17
■あらすじ
日曜日、ボーイフレンドのいない奈美はデートの相手もいないまま映画館に時間を潰しに出かけた。映画館へ向かう途中、突然目の前に男がひとり空から降ってきた。
「そーおどろかんでもよい。わしはただの仙人じゃ。」
男は若く見えたが、言葉遣いがどうも年寄りくさい。
「あーわかった。"びっくりTV"だぁ。」
奈美は思った。空から男が降ってきて、仙人だなどと言うのは現実離れしすぎている。きっとTV番組にちがない。
男は信じない奈美に仙術を披露した。いくつかの仙術を見せ奈美が納得?したのに満足そうだった。
奈美は、仙人と名乗る男と近くのレストランに入った。男は師匠のもとを逃げ出してきたのだという。そして食事のお礼に望みを1つかなえる約束を男は奈美にした。
「ボーイフレンド」
それが奈美の願いだった。レストランを出て望みをかなえるべく術を行っていると、そこに巨人が空から降りてきた。男の師匠だった。師匠はサイズを間違えて登場したらしく、すぐに手のひらに乗るほどに小さくなった。師匠の目的は男を連れ戻すことと、仙術の源の杖を取り返すことだった。
もちろん師匠のもとに戻る気のない男は、師匠に仙術で対抗するのだが、師匠の方が上手だった。男は近くのおもちゃ屋のショーウィンドウにあった超合金ロボットのおもちゃを巨大化し同化。そして師匠に立ち向かった。それに対抗するべく師匠は巨大化した。いや、巨大化したのは奈美だった。
「わしは年じゃてアクションは苦手じゃ!! そちにまかせる。」
しかし奈美はケンカすらしたこともないし、戦う気も理由もなかった。師匠は奈美の体をコントロールし、巨大ロボットと戦わせ始めた。こうして、巨大少女と巨大ロボットの戦いが始まり、街は戦いに巻き込まれ破壊されていった。
■解説
けっこうむちゃくちゃします。踏む投げる壊す。誰も死なないように感じさせるのは、残酷なシーンを抜いた構成にあります。でも無人の街で戦っているのではなく、足もとには人がちらほらいますし、破壊されたビルからは人が転落しています。これでどうしてこういった、あっけらかんとした軽い作風になるのでしょうか。
あたりまえな話ですが巨人同士が戦うと、巨大なだけに街のダメージは大きいのです。もし巨人の大きさが一時的なもので、再び元の人間の大きさに戻るとしたら、街への被害は相当気になると思いますが、巨大奈美は気にしません。酔っているということもあるのでしょうが、まりにもあっけらかんと破壊行為をします。その巨大奈美の持つ雰囲気がそのまま、作品の雰囲気になっています。
■ワープin VOL.3
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