第34話 マイクロ光線
原作:加納一郎
公開日:2001.04.08
更新日:2006.10.31
■あらすじ
30世紀の未来。時間捜査局と呼ばれ時空を超えて機動する平和を守る機構があった。時間捜査局に所属していたジェッターは、時間犯罪人ジャガーを追って時間航行をしていた。ところが誤ってタイムマシン同士が接触してしまい、故障したジェッターの乗った流星号は時間航行できなくなってしまった。そしてジェッターは、20世紀の世界に残されてしまった。30世紀に戻ることができなくなったジェッター。女流カメラマン水島かおるや科学捜査局の西郷長官とともにジェッターは、20世紀の犯罪に立ち向かうことを決心した。
(第1話より)
★ ★ ★ ★ ★
海上で次々と姿を消す貨物船。その真相をつきとめるためにジェッターは流星号に乗って現場に調査に向かった。そこで怪しい潜水艦を発見。ところがその潜水艦に追われ、やがて捕獲されてしまう。それだけではなかった。ジェッターは、縮められて小さくされてしまったのだ。
水島かおるは、ジェッターを捕らえた潜水艦に忍び込むことができた。そこで彼女は、行方不明になった貨物船の模型を見つけたのだったが、実はそれが本物を縮小して捕獲したものであった。やがて彼女もその事実に気がつくが、同時に見つかってしまった。そして手足を拘束され身動きできなくなってしまった。
一方、捕らえられたジェッターは、小さな箱に入れられたが、そこに先に捕らわれていた貨物船の乗組員と流星号の活躍のお陰で箱から脱出することに成功した。しかし、縮小された小さな体では、それ以上どうすることもできなかった。しかしジェッターは諦めることなく元に戻る方法を見つけるべく潜水艦の中を調べて回った。そしてある部屋に身動きできずにいる水島かおるを見つけたのだった。
ジェッターと水島かおるは、協力してこの危機を乗り越える方法を探すのだった・・・
■解説
1964年から放送されたこの作品は、当時の人気アニメでした。エイトマンの後を次ぐ番組としてTBSによって企画され、エイトマントと同じTCJ(現在のエイケン)が制作しました。マンガは、雑誌少年サンデーに連載されていましたが、いわゆるメディアミックス企画で、マンガ連載とテレビ放映は同時に行われました。マンガ作品の資料がないために内容的に、マンガとアニメで同じ物であったかは判りませんが、当時はマンガ、アニメともに相当の人気であったことは間違いのないところです。
SFというものは子供が一番に理解する力があると言われています。SFの好きな子供であっても大人になるほどにSFから疎遠になり、再び会う機会があっても、なかなかのめり込めないと言われています。おそらくこのサイトに訪れる方の多くは、SFマインド豊かな心の持ち主たちであると確信しています。もしかすると、そうしたSFにときめいた記憶の中に、このスーパージェッターがある方も結構多いのではないでしょうか。子供向きに制作されたSF作品ですが、実はかなりハードSFの要素をふんだんに盛り込んだ作品だったのが、このスーパージェッターでした。タイムパトロール、パラライザー、反重力ベルト、通信機をかねた腕時計…タイムストッパー。そしてマッハという単位が音速であることを教えてくれた流星号。そうした当時耳慣れないものを判りやすい形で子供に教えてくれたのが、筒井康隆氏と久松文雄氏であったのです。
アニメの脚本を担当したメンバーは錚々たるもので、筒井康隆、豊田有恒、半村良、眉村卓、辻真先、桂真佐喜などの作家や脚本家の名前が並びます。その中でも筒井康隆という名前に目がいきます。筒井康隆氏は、当時新進気鋭の作家で、この作品の印税によって独立し本格的な作家活動に入ることができたということを何かのインタビューでご本人が語っていました。彼は突拍子もないことを思いつく作家で、また他の機会にご紹介することもあると思いますので、今回はこの辺で切り上げておきましょう。
マンガを描いていたのは、久松文雄氏。当時すでに人気のあった久松氏ですが、このスーパージェッターで人気を不動のものにした感があります。彼の作品はキャラクターに魅力があるのが特徴で、この作品の登場人物達もその例外ではありません。ジェッターもさることながら、脇役のひとりひとりの性格描写によって、実に生き生きとしたキャラクターが描かれていました。そういえば、同じ久松氏原作のアニメで、スーパージェッターの後に制作された「冒険ガボテン島」という作品がありましたが、確かガリバー旅行記をネタにした話があったと記憶しています。どなたかご存じの方がいらっしゃいましたら、教えていただけないでしょうか。
ところで、ここでご紹介させていただきましたカットは、放映時の物ではなくてカラー着色された物です。白黒作品として制作され、放送時も前編白黒でしたが、後にアメリカへ輸出する話があった際に、26のエピソードをセレクトしてカラー着色を施しました。この作品もそうしたカラー着色を施されたエピソードのひとつです。
さて、このエピソード。いくつか興味深いところがあります。縮小された物体は、もとの重量のままであるというのです。なるほど、質量保存の法則はここに生かされているという訳です。さすが、SF作家の考えることは違いますね。でも、ちょっと待ってください。ということは、貨物船の重さは数万トン。それが潜水艦の中にあるのですから、もしこの潜水艦が比重による浮力を利用しているのなら、海面に浮かび上がるどころか海底まで真っ直ぐ沈んでしまいそうです。海底にまで沈んでクローラーなどで走り回ったら、それこそ海底軍艦…失礼。いや、きっと未知の方法で、潜行したり浮上したりできる潜水艦に違いないのでしょう。
でも、まだ疑問が残ります。もし重量に変化がないのでしたら、最後に方で水島かおるさんは空に向かって浮き上がるのではないかということです。あ? オチが判っちゃた方ごめんなさい。そ\x{301c}なんすよ。実は彼女に身にとんでもないことが起きるんです。まさに見てのお楽しみです。
21世紀を迎え、30世紀まであと900年ほど。この作品に登場したものは、みんな実現されているのかもしれません。そして残念ながらもこの作品が予言したとおり、30世紀にも悪人が存在するのでしょうか…
■スーパージェッター 第34話
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