原題:Heraclea:a legend of warrior women.
原作:Barnard Evslin
公開日:2001.01.29
更新日:2004.09.21
■あらすじ
ギリシャの神々の王ゼウスの妻ヘラは、ゼウスの浮気を知り復讐の女神となっていた。かねてよりヘラは、ゼウスの好色ぶりに怒りを隠せずにいたが、今回ほど怒りに燃えたことは無かった。そこでヘラはゼウスへの報復に、自分も浮気することに決めた。
浮気の相手を決めたヘラは、愛神エロスにお膳立てをさせ、テーバイの王アンピュトリオンと歓喜の時を過ごせるようにした。王の妻アルクメネに化けたヘラは、こうしてゼウスに対して報復を行うことに成功した。そしてヘラは身ごもった。
やがてヘラは、ひとりの女の子を生むが、その女の子は神の子にふさわしくい、小さな子供であった。それは、賢者でもある神ヘルメスが、ゼウスの怒りを避けるために一計を案じた結果であった。ヘラは神の子を殺すこともできず、その子の処分をエイレイテュイアに任せたのだった。エイレイテュイアはその子をアルクメネの子供として、授けることにしたのだった。
アンピュトリオンとアルクメネの間に双子が生まれた。ひとりは男の子で、もうひとりは女の子だった。女の子は、ひどく小さな子供で、とても生き延びることは出来ないだろうと思われていた。しかしパラエモナと名づけられた小さな王女は、アルクメネの加護の元に育っていった。しかし、普通の子供の背の半分もないような小さな子供だった。 小さな王女は、その体躯に似合わず元気で、病気などとは縁が無かった。その有り余るパワーについていける子供はおらず、小さな王女の遊び相手になる子供はいなかった。しかし、いとこのエウリュステウスと出会い、王女はいとこと過ごすようになった。エウリュステウスは、残忍な面をもっており、ある日いたずらしようと王女に襲い掛かってきた。しかしエウリュステウスはキスだけすると、履き捨てるように王女の小さな体のことをなじったのだった。王女はこれまでにない屈辱を感じ、彼を殺してしまった。王女は帰ることもできなくなり、森の中に消えていった。
森の中で暮らす少女の運命を変えるきっかけとなったのは、メランプスとの出会いだった。老人がひきつけを起こした少女を助けたのが、少女とメランプスとの出会いだった。少女はその後、メランプスを父のように慕い、一緒に暮らすことを望んだ。少女が行方不明の王女であることに気が付いたメランプスは、最初家に帰るように少女を説得したが、やがてあきらめ一緒に暮らすことになった。
しかし、それもある事件がおき、長く続くことはなかった。彼女の体は巨大に変身し、それまでとは全く違う冒険の日を送ることになったのだった・・・
■解説
ヘラクレスはご存知でしょうか。混沌としたギリシャ神話の中でも、比較的整理された部類に入る物語に登場する主人公です。ヘラクレスは、ギリシャ神の王ゼウスとアルゴス国の王女アルクメネの子供で、ヘラの目を盗んでゼウスが生ませたものです。それにもかかわらず、ヘラの栄光という意味のヘラクレスという名前がついています。
原作者のエヴスリンは、ヘラクレスの物語は地中海民話の女傑の話を、ギリシャ人の好みで男の豪傑の物語に変えられてしまったものだと主張しています。確かにギリシャ神話は、地中海沿岸部にあった国々をギリシャが支配下においていった際に、土着の民話をギリシャ神話に加えたものが多いのは事実です。そのために混沌とした部分も多く、オデッセウスに代表されるように、後に多くの作家がこれをまとめ上げていって、今知られている形になりました。しかし細かい部分に目をやると、つじつまの合わない部分もかなりおり、体系立てされた物語とはいいにくいものがあります。また、諸説論議の残すところもあり、いくつかの異なる体系があるのも事実です。
そうした中にあって、ヘラクレスは女であったとしたこの作品は、異色であり、それでいてギリシャ神話に新しい解釈を加えています。さて、パラエモナ(ヘラクレア)の身長はどのくらいなのか。作品中、身長の表現が微妙に変化しており、判りにくいところですが、普通の人の2倍から5倍のあいだであると思われます。ルーシー・マーティン・ピッツァー氏による挿絵もこの範疇で描かれており、間違いはないと思う。このあたりは、そうした数値的な正確さよりも、物語の展開や進行上、面白くなるように都合されているのでしょう。もっとも、神の子であるのだから、身長は自由なのだと言われてしまえば何もいえないのですが。
■ヘラクレア物語
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