トライガン
原作:内藤康弘
公開日:2000.10.21
更新日:2004.09.17
■あらすじ
ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
600億ダブドルの賞金をかけられ、彼の歩くところ災厄が訪れ、彼に訪れた後には何も残らないという、伝説の賞金首。一見ヤサ男の変なやつだが、彼に銃を向けても無意味でしかないという強者。ひとりで旅する目的は誰も知らず、彼の優しい笑顔の下にある苦悩も誰も知らない。
ベルナルディ保険協会から派遣された調査員、メリル・ストライフとミリー・トンプソン。彼女たちはヴァッシュによる被害を最小限に食い止めるため、その彼の監視にあたることになった。最初はヴァッシュの軽いうわべに翻弄された彼女たちだったが、やがてヴァッシュの奥底にある何かを感じるようになっていくのだった・・・
1998.04.01 OA Start
息子と親父で150以上の罪状により700年の刑期を言い渡された。しかし、アイプリルシティの町民によるヴァッシュ捕獲作戦に一枚かむために、自主的に刑期を繰り上げて脱獄した。そしてアイプリルシティの町民たちの目の前で、ヴァッシュと一対一の対決をすることになったが・・・
1998.04.29 OA
娘と母親。それから、爆弾代わりの息子3人。その戦い方は人間業ではなかった。巨大な母親の強じんな肩を使い、息子をボールのように目標に投げつけるのだ。親子は金のために雇われて来た。緑の土地を老夫婦の手からもぎ取るために・・・
1998.07.08 OA
(c) 内藤康弘 / 少年画報社・徳間書店・日本ビクター
■解説
ハードボイルドタッチでありながら、笑えるコメディ満載の作品。こんなにも男臭いコメディは、他に無いだろう。この作品が凄いのは、ハードボイルドな男のダンディズムを肯定しながらも、笑えるコメディ作品に仕上げているところだろう。ハードボイルドを笑いものにするパロディ王ラリー・ニールセンとは、全然異なる路線である。この新しい感覚で仕上げられたこの作品は、まさしくアニメならではの良さが十二分に引きだされている。
二枚目の俳優が出てくるとき、三枚目を演じると映画では観客に受けの良い作品が作れる。それを極端に構成したのが、この「PT-pict」であると言えよう。アニメ作品には極端なキャラクターを登場させるのが、スとリー展開上面白くなるわけだが、この作品には極端に濃いキャラクターしか登場しない。それでいて鼻につかない。見事な演出である。キャラクター設定だけでなく、そのキャラクターの使い方も大切だということをこの作品が証明してくれる。
演出も作品全体に神経が行き届いていて、画面構成、進行、音楽、そのどれをとっても文句無く、その調和も見事である。画面から流れるフィーリングは、あるときはサム・ペキンパーであり、あるときは黒澤明である。そうした男臭い演出の中に、垣間見せるアニメらしいギャグが溶け込んでいるのは、西村聡監督のセンス。良いねぇ。
音楽も、まるでライクーダが曲をつけているような、これまでのアニメにはない感覚が実にクール。これは物まねという意味ではない。そもそも、音楽や映像を文字で解説することなど不可能なので、何かを引きあいにだすならライクーダかなということだ。とにかく乾いた大陸的な絵によく似合う音であるが、こうしたまとわりつくようなギターの音は、下手に使うと乾いて聞こえない。本多保則音楽監督は、絵に合わせるのに苦労したにちがいない。しかし見ている側にそんな気負いを感じさせることは全く無く、それがギターを乾いた音に仕立てている。
そして脚本。連続した話の中に、毎回きちっとテーマを持ち込んでまとめている。実に歯切れが良い。シリーズの前半でヴァッシュの背負う宿命と過去について謎を深め、後半でそれが解きほぐされていくというシリーズもののセオリーどおりに構成された脚本。そうしたセオリーを踏みながらも、脚本上も心憎い演出がされている。このあたりは解説すると、つまらなくなるので見ていただくことにして省略。
そして、本命ネブラスカ親子。巨大な母親と巨大な長男。身長はおよそ15mといったところだろう。なんとなく人体実験の香りがしてくるが、細かい説明など無しでの登場なので、ここは目一杯想像するしかない。この巨人2人は、人間というよりも生きたロボットといったところだ。長男の武器は、ロケットパンチ。母親の武器は、手りゅう弾。そしてそのどちらも生体兵器である。ロケットパンチはまあ判るとして、母親の息子を手りゅう弾のように投げるという発想はどこから来たのだろうか。実にユニークで面白い。端役ではあるが、巨人はこの2人だけなので印象としては強烈だ。それともそれは、巨人に興味を持っている私だからなのだろうか。
お勧めの逸品。見てない方は、是非ご覧あれ。
■TRIGUN
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