バグダッドの盗賊

原題:The Thief of Bagdad

ロンドンフィルム作品

あらすじ

目の不自由な物乞い。しかしどことなく気品のある風ぼうの若者。ふとしたことから、大臣のハレムに招き入れられた。そして、目を直してくれるという。しかし、若者は目が治ることを良しとしなかった。そしてその理由を淡々と話始めた。

「私の連れの犬は、もとは犬ではなかった。機知に富んだ盗賊の少年だった…」

私は、そのとき王だった。アーマド王。それは私のことだ。私にかなわない望みなど無いように思えたが、その実権は大臣のジャファルの手にあった。しかし当時の私にはジャファルに言いくるめられた何もできない存在だった。すべてジャファルにまかせていれば、楽しいことばかりだった。それはスリルもないもない生活だった。

ある夜私は、お忍びで待ちに出た。そこで聞いたのは、自分への悪口、そして非難のことばだった。臣民はジャファルの政策に不満を持っていたが、それは同時にアーマド王の政策でもあった。自分の愚かさを悟った私だったが、すでにジャファルの罠に落ち、狂人として投獄されたのだった。

しかしそれ私にとってよかった。その牢獄で、少年に出会ったのだ。少年は牢獄の中だというのに、希望に満ちた目で自分の夢を語ったのだった。大きな船に乗って、インドや中国に行く話をする少年。しだいに打ち解けあった私と少年は、牢獄を抜け出したのだった。そして少年の小舟で追っ手を交わして逃げたのだった。

少年はアブーと名乗った。私がアーマドだと知っても、少年は非難することはなかった。そう、臣民の敵は私でなく、悪政のもとはジャファルにあったことを賢い少年は理解してくれたのだ。そして、少年の輝く瞳は、まっすぐに少年の未来を映していた。その未来に向かっていくことを、私と共に向かって行くことを約束して…

私と少年は、ある大きな街に着いた。空かした腹を満たすために立ち寄っただけのその街で、私はその国の王女に一目ぼれしてしまった。そして私は、少年との冒険の約束よりも、王女をとってしまったのだ。

「そこに私を待ち受けていたのは、悲惨な運命だった。私は光を失い、そして少年も舞い添えで犬にされてしまったのです。私は今でも王女を探しているのですが…」

「その王女はここにいます。奴隷商人に売られ、その後わたしどもの主が買い取ったのです。しかし王女は意識もないままに床に伏せております。」

なんということだろう。若者がもう二度と会えぬと思った王女。その王女に会えるのだ。そして、奇跡が起きたかのようだった。若者が床の脇に立つと、なんと王女が目覚めたのだった。しかし若者は、知らなかったのだ。ここの主こそがジャファルであるということを。

結局、王女はジャファルの船で連れ去られてしまった。さらに犬となったままの少年は海へ投げ込まれ、そして若者は光を失ったままひとり取り残されてしまったのだった。ところがどうしたことだろうか、突如若者の目に光が戻ったのだ。そして若者はその光の中に、走り寄ってくる少年の姿を目にしたのだ。ふたりは早速小舟でジャファルの船を追った。が、ジャファルの魔術によって引き起こされた嵐のために、海のもくずとなってしまった…

いや、少年は生きていた。壊れた小舟とともに砂浜に打ち上げられていた。しかし、若者の姿はそこにはなかった。若者を探す少年。少年が若者の代りにみつけたのは、奇妙な形の壺だった・・・

解説

ワ-ハッハッハ。大声と共に現れる大魔神。この映画の大魔神は歴史に残ったと言っても良いでしょう。哀れな矮小な存在から、無敵の巨人に様変わりする様は非常に面白く、空を飛んだり、自分の主人を息で吹き飛ばしたり、笑い飛ばしたり、やりたいほーだいの大魔神。それでいて、どことなく憎めない大魔神。大魔神役のサブーが、いい味出してます。

その魔人とともに、この物語を盛り上げるのはくれるのが、魔人の主人となった少年です。失礼だけれど彼は美少年ではありませんが、きらきら輝く瞳と、チャーミングな笑顔の持ち主で、素晴らしい歌声も披露してくれます。二枚目王子のもたじたじです。

世界各国が第二次大戦へと続く戦争の道を歩む中、早くからイギリスはドイツに対して宣戦布告し戦争に突入していました。この映画は、そのような時期にイギリスとアメリカで合作したイギリス映画です。しかしそんな時代背景とはうらはらに、全く戦時色のない映画です。時代背景を感じさせるものは、この美しい映像に見つけることは出来ません。夢と冒険に満ちあふれた、すばらいい作品です。

この映画は、1924年にアメリカで製作された作品のリメイクですが、この作品はオリジナルに勝る出来栄えです。その他の同名映画と比べても、この作品の出来栄えにはかないません。そして公開された年の1940年第13回アカデミー賞は、名作レベッカと争い、カラー部門撮影賞、カラー部門室内装置賞、特殊効果賞を受賞しました。演出、キャスト、舞台、特殊効果、音楽そして脚本。見事にマッチしていて、同年代の作品からは想像も出来ないクオリティの高さを持っています。また、実にテンポが良く、ここに書き記したあらすじは、全編の半分にも満たない部分です。ファンタジー映画の原点がすべて詰まっているような気さえします。

ビデオをお探しの方へ

このビデオを探されるときは、同名の映画が多いのでご注意ください。1940年に製作されたバグダッドの盗賊は、この作品だけですので、製作年を目安に探されると良いと思います。

Published : 2000.09.25
Update : 2006.11.17

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