女フィスト

三山のぼる作品

あらすじ

16世紀末フランスのロレーヌ地方、妻マドレーヌを救うため悪魔と契約をした医者ジャンの娘は、悪魔との契約の末に生まれた悪魔の子だった。しかし、悪魔の子であるはずのアルマは、父ジャンの意志を継ぎ、人々から病気や苦しみを取り除くために毎日を過ごしていた。

アルマの美貌とともに噂は広がっていった。やがて、アルマは魔女裁判の犠牲になり、財産はもとより、その命を失ってしまった。いや、失ったのは体だけで、命は時空を超えて生き続けていた。

夏川真理子は、女優として人気上昇中だった。彼女には好きな男がいた。その男のために仕事を辞めてもいいとすら思うほど熱を上げていた。しかしその男、流動玲二には異常な性癖があり、また黒魔術に傾倒するような男だった。

結婚を迫られた玲二は、自分の婚約者である真理子の腹を裂き自分の子供でもある胎児を悪魔に捧げ、自分の欲求を叶えようとした。そして真理子の体を借り、アルマが現れた。

アルマと玲二の体を重ね合わせたとき、2人はアルマが肉体を失った時に時空を超え移動してしまった。成り行きから玲二はアルマを殺したレミに仕えることになり、やがて魔女として再度捕えられたアルマと対面する。(第1巻より)


アルマの仲間だと思われた玲二は、火あぶりの刑に処せられることになった。処刑場で体を縛られ、着々と処刑の準備が進められていた。

そこにアルマが現れた。しかも現れたアルマは、見上げるばかりの巨人であった。

アルマは玲二の足下についた火を消すために玲二の前に立ち下腹部に力を込めた。(第2巻より)

解説

作品のメフィストとは、ゲーテの戯曲ファウストに出てくる悪魔メフィストフェレスからきています。メフィストフェレスは単純な悪としての悪魔などではなく、人間の欲望をかき立てる象徴です。この作品は、三山流のファウストの解釈と受け取ることができます。

戯曲のメフィストフェレス同様にこの作品のアルマも主人公ではありません。主人公ではないのでしかたないと言えばそれまでですが、どうした訳か話が進むにつれてアルマの存在が希薄になっていきます。これは物語を長い間書き続けていくうちに、作者の哲学が変化してきたととらえる事ができるのではないでしょうか。

三山氏の作品は、この他にも「宇宙翔ける者たち」を紹介させていただいています。

Published : 1999.06.21
Update : 2004.09.17

[ Prev page ] [ Category index ] [ Next page ]

You can find the work by a keyword.

Keyword: