精霊伝説ヒューディー

大野安之 作品

あらすじ

第2巻より

世界がどこまでも平らに続く平面世界。そこは、人間と精霊が共存する特殊な世界だ。

ヒューディーは精霊だが人間に育てられたために、人間の特性を持った特殊な存在だった。人間でもなく完全な精霊でもないヒューディーの人生は、父の死から始まった。ヒューディーは自分という存在を把握するために旅に出た。

ヒューディーが自分以外の精霊に会ったのは、大都会ターファンだった。ターファンは、何か邪悪なものを感じる街だった。精霊ジャハンは、精霊としては珍しく人間の間に居を構えていた。ヒューディーはジャハンから精霊の力の出し方を教わっていった。

大内裏に怪しげな気配が漂うとき、ジャハンはターファンを出ていく。精霊とは、もともと人間の世界に干渉しない存在だったのだ。人々は大内裏の動きに恐怖を感じながらも、力でこれに対抗しようと決起した。その中にヒューディーの姿があったが、精霊としての力を出し切れず倒れてしまう。

大内裏は味方も敵もなく、人々を殺し始めた。大内裏にとって人間はただの生け贄にすぎなかったのだ。そんな混乱の中、ヒューディーに変化が。そう精霊のヒューディーが完全に開放されたのだった。人々の前に完全な精霊として現れたヒューディーは力強く、そして片手で戦艦を沈められるほど巨大だった。巨大なヒューディーを止める物は何もなかった。大内裏はヒューディーによって巨大な結界の中に封じられてしまった。(第1巻より)

解説

大野氏の作品には、粗削りでいて大胆な線での表現が似合います。大野氏は、小林一夫氏が主宰する劇画村塾出身の作家です。劇画村塾は多数の漫画作家を輩出していますが、同じころ席を置いていた山本貴嗣氏もやはり粗削りな線でスタートしていました。しかし両氏の作品は、同じSFの世界を作りながらもまったくことなるものです。

両氏ともにSF系を得意とし、アクションの多いエンターテイメント性の高い作品を描いています。しかも線は粗削りで大胆なペンタッチ。しかし、両氏の作品はまったく異なる方向性を持っているのは、誰の目にも明らかです。

大野氏の描くキャラクターは思いっきり漫画的にデフォルメされているのに対し、山本氏のキャラクターは八頭身的なシルエットをもち、キャラクターの持つ雰囲気にも明らかな差があります。デビュー当時は両氏の作品ともに、若い力をふんだんに感じる頼もしいものでした。

ところが、大野氏はあるとき突然、整理された線でキャラクターを描くようになりました。ときどき、整理し尽くされずにパワーのあふれ出る部分もありますが、表現の仕方が以前とは異なり制御されたものになっています。この精霊伝説ヒューディーにおいても第2部第3巻から明らかに以前と違う描き方をしています。大野氏の中で何かが起こったのは間違いありません。

Published : 1999.06.16
Update : 2004.09.17

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