ちいびんぐ

短編集「森秀樹選集・第2巻」より

森秀樹 作品

あらすじ

「人間の体を5センチほどにちぢめてしまう薬ですと!?」

 日の暮れた第七三一野望中学校の理科室ではとんでもないことが行われていた。

「これを見てください。」

矢島先生の目の前に、ピンセットでつまみ上げられた5センチほどの男の子が。この学校の生徒である武田巧の縮められた姿だった。

「縮小する模様をご覧になりますか?」

 なんとそこには生徒がもう一人、巧の同級生である伊代が体を縄で縛られていた。石井先生は伊代の口を塞いでいたガムテープをはがすと、黒い丸薬をその口の中にいれた。伊豫の体はみるみるうちに縮みはじめ、セーラー服の中に消えていった。

 石井先生がセーラー服をめくると、そこには10センチほどに縮んだ伊代の姿があった。

「男と女は薬の効果が違うようですな」

石井先生は伊豫の体をピンセットでつまみ上げると、矢島先生の目の前に吊り上げた。

解説

縮められた2人が先生から逃れるところが物語の中心で、ゴキブリやネズミと戦うエピソードなどが詰め込まれています。ガリバー旅行記よろしく、小さくなった人間が見る世界の面白さを表現した作品。2人の冒険の面白さは、映画ミクロキッズに通じるものがあり、コミカルなエンターテイメントに徹しています。ノンストップアクション的な演出は、まさしくハリウッドのもので、このあたりに作者のセンスがうかがえます。

こうした面白さに、ひねりを加えた演出となったのが、2人が同じ大きさに縮まなかったとこでしょう。ヒロインを守るべきヒーロー役がヒロインの約半分ほどの背丈しかないところが、コミカルさを盛り上げるのに一役買っています。

Published : 2000.02.05
Update : 2004.09.17

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