家畜人ヤプー

沼正三:原作
石森章太郎(第1巻):画
シュガー佐藤:画(第2巻以降)

「宇宙帝国への招待」編

クララ(クララ・フォン・コトヴィッツ)と麟(リン/瀬部麟一郎)は婚約を誓った仲だった。2人は森の中で乗馬を楽しんでいた。裸になってリンが水浴びしていると、厩に宇宙船が墜落。中には女性が倒れていた。介護しようとリンが近づくと不気味な犬が襲い掛かり、かまれた麟は体が動かなくなってしまう。宇宙船に乗っていた女性が目を覚まして言うには、麟を元の状態にもどすには母星に連れていき解毒処理を行う必要があるという。やがてきた母船にクララは麟と一緒に同乗する。

宇宙船に乗っていた女性はポーリーン・ジャンセンと名乗った。ポーリーンが麟を人間扱いしていないことにクララは憤りを感じていた。そんなクララを同情するポーリーン。なぜならポーリーンの世界では、日本人は人間ではなくヤプーという人間に似た動物であることが証明されているからだ。クララを見てポーリーンは、ある計画を抱き実行しはじめた。

クララ達は、墜落した宇宙船ごと母船に収容された。向かうは未来社会イース。ジャンセンは、救助に来てくれた仲間達にイース人として紹介した。過去から勝手に過去の人間をイースに連れてくることが出来ないからだ。そして、それはジャンセンの計画の最初の一歩でもあった。

その世界は2000年後の未来世界だった。そこでは白人が神のように振る舞い、黒人は奴隷として、そして日本人は人間でないことが証明されて家畜のように扱われていた。それもただの家畜ではなく、便器として改造され使われたり、矮人にされて女性器の内部で避妊具の替りに使われていた。

矮人決闘(ピグミー・デュエル)

小さな矮人達による決闘ゲーム。

イースまで約1時間の道のりだった。その間、クララはジャンセンを救助しに来た白人たちと賭けゲームを行うことに。ゲームは矮人(ピグミー)たちを戦わせるものだった。矮人の身長は白人の1/12程度。縮小されたヤプーだ。ジャンセンはコジロを選び、賭けを受けたウィリアム・ドレイパアはムサシを選んだ。演目は「OLD PT-pictN FENCING」だ。

結果はムサシが勝ったが、怪我をおっていた。勝ったものはクララにあげるという約束だったので、その処遇はクララに任された。クララは命令した。

「プレイ・ハラキリ」

麟の解毒処理は行われたが、人間扱いされない麟は、一心にクララに会おうとする。一方クララは少しづつ麟に対する思いが変化し始めていた。麟はやっとの思いでクララに会えたが、クララさえも気がついていないクララの心変わりに気がつき、無理心中を図る。しかし、部屋に置いてあったオルゴールから強烈な催眠音楽が流れ、寸でのところで無理心中は阻止された。オルゴールの中に入っていた矮人ヤプーの機転によるものだった。

クララは、イースに帰化することを考え始めていた。そして麟はクララのペットとしての訓練を施された。クララは、女性上位、白人の絶対的権力による社会に、少しずつ溶け込んでいった。

浴槽矮人隊(バスタブ・ピグミーズ)

浴槽には浴槽矮人隊と呼ばれる矮人が待機している。水中でも活動可能な矮人で、小さな体で体の隅々まできれいにしてくれる。

クララが浴槽に入ると、人形のような浴槽矮人隊が浴槽の脇から大勢出てきた。

浴槽にたっぷりとはられた湯に、次々と飛び込む浴槽矮人隊。彼らの目的は、クララの美しい体だ。繊細な動作で、クララの体の隅々まで洗うのだった。

「悪夢の日本史」編

すこしづつ明かされるイースの世界の謎。それは、日本の歴史と大きく関わるものだった。イース人たちは、太古の昔から日本に関与していたのだ。麟はクララのもとにいながらにして、日本史との接点を見つけ、そして日本史の多くの謎がイース人による干渉であることを知ることになった。麟もクララとは別に、少しずつイースに溶け込んでいった。

第四種女性ホルモン検定小畜

子種が着床した女性の尿を飲むと酔ったように歓喜する矮人。

ポーリーン付の医者、デミル博士は惑乱していた。ポーリーン専用女性ホルモン検定用の矮人を死なせてしまったのだ。

デミルは、倉庫係の黒人奴隷を騙し別の女性ホルモン検定用の矮人を用意し、死んだ矮人とすり替えた。すり替えがうまくいき安堵するデミル。白人の目から見れば、小さな矮人を区別するのは不可能に近いのだ。おそらくポーリーンも気がつかないだろうとデミルは考えたのだった。

しかし、実は死んだ矮人には、特別な処置が体に施されていたのだった。もともとこの矮人は、白人女性の尿を直接体に取り込み、体に出るアレルギー反応から受精について検査するものだ。死んだ矮人には受精時のアレルギー反応時に特別の文字が浮き出るように施してあった。

「快楽の超SM文明」編

麟は訓練を終えていた。そしてクララが会いに来たのだ。麟はクララのためにヤプーであることに勤めた。どのヤプーよりもヤプーらしく行動した。クララと麟がキスをする仲だったのは、まだ昨日のことであるのに。それでもクララがセッチン(便器に改造したヤプー)を使うのを見たときには、麟はショックを受けた。

「なぜ日本民族はこんな目にあわなくちゃならないんだ」

「無条件降伏」編

ポーリーンは子宮畜を購入した。目的は自分の体内から受精卵を取りだすためだった。イースでは、受精卵を取りだすのに縮小されたヤプーを使い、膣から入れて取りだすのだった。採取は成功した。

子宮畜(ヤプム)

子宮畜によって取りだされた受精卵は、代理子宮を提供する特別なヤプーに移される。方法はアンドロイドを使い、ヤプーとセックスをさせる。このとき、アンドロイドの陰茎の中を子宮畜が受精卵をもって通り抜け、ヤプーの子宮まで行き直接着床させるのだ。

ドリス・ジャンセンは麟を気に入っていた。ヤプーとして優秀な麟。おそらくクララは手放さないだろう。ドリスは麟の妹の百合枝を誘拐し、麟と掛け合わせてより優秀なヤプーを作り出すことを考え始めていた。計画を練るドリスの足もとには、掻痒小畜が何匹かいた。

掻痒小畜(スクレイペット)

約7cmの身長の掻痒小畜は、快感を得るために作られた。20世紀では病気とされていた白癬菌による皮膚疾患は、イースでは快感のために使われていた。

この疾患はいつでもすぐに完治できるのだ。そして、わざと患部を作り、これを掻痒小畜に食べさせる。そのときかゆい患部を掻く快感を得ることが出来るのだ。患部は会陰部や趾間部に作られた。

ドリスの掻痒小畜には、リックという白人がいた。リックはある裁判で有罪を言い渡され20年の縮小刑が言い渡された。20年の刑期のうちの10年間は、120人の貴婦人の間を順番に1ヶ月づつ奉仕するというものだった。そして巡り回って、ドリスの元にいたのだ。

約7cmまで縮小されたリックにとって、ドリスの完ぺきとも言える体は神々しいものだった。そして、ドリスの会陰部の疾患を食べることは、リックの楽しみにもなっていた。リックはえん罪をかぶせられていたのだが、ドリスの元に来たときそんなことはどうでも良くなってしまった。

そして10年が経ったある日、通常の体に戻ったリックはドリスの家を訪ねた。ドリスに掻痒小畜として飼ってもらいたかったのだ。しかしドリスは数多くの掻痒小畜がいた。そこでドリスは、リックに膣内小童子にならないかと提案した。

膣内小童子(トンネルボーイ)

膣内小童子は約1/50の大きさの極小のヤプーだ。ピルやコンドームを追放した避妊具である。性交の前に膣内に入り、陰茎から出された精液を全てなめとる。1回の射精分を完全に飲み込めるように、胃と腸の縮小割合が変えてある。性交中に陰茎によって突かれ、膣内で死んでしまうことも多い。寿命は1年程度。叫び声を上げたときに、音楽のように聞こえるように細工したものもある。

ポーリーンは、麟がヤプーらしい振る舞いをするようななったのを見て満足だった。そしてクララを晩餐に招待した。晩餐では、食用ヤプーをふんだんに使った料理が出された。

矮人料理

さまざまな料理があるが、食用の矮人を使ったもには、ほとんどがまるのままに出てくる。例えば。極小のヤプーをまるのまま串に刺して、生きたまま食べる。骨は骨軟化処理されて全て食べられる。口の中でバンザイと言わせることで美味しくなるとされている。また、熱いフライパンの上で矮人を躍らせて、はがれ落ちた肉を食べる料理や、生きたままサシミで食べる活け作りなどがある。

クララは満足だった。晩餐での麟の最高級ヤプーとしての振る舞い。大きな賭けで大金持ちになったこと。またウィリアムの結婚の申し入れ。すべてに満足していた。そしてクララは麟に褒美として、20世紀に戻るチャンスを与えた。しかし麟は・・・

解説

沼正三氏の同名小説を石森章太郎氏が漫画に。漫画というよりも絵物語とでも呼ぶべきものでしょうか。石森氏の挑戦的な表現方法で映像化されています。

漫画は初巻のみ石森章太郎氏が描いていますが、続巻からシュガー佐藤氏に引き継がれています。佐藤氏は画風を石森氏に見事に合わせていますので、通して読んでもさほど違和感を感じることはないでしょう。漫画で改めて沼氏の世界観を目で見ることになるのですが、直接的に視覚に訴えてくる分だけ衝撃的な印象があります。

神格化された白人を強調するために身長が7cm程度の矮人が度々登場します。矮人との対比で絵的に巨大な白人は、神々しく感じます。そのため矮人が、いかに白人を神格化しているのかが、良く表現されています。例えば、トンネルボーイと呼ばれる矮人達は、コンドームの替りに精液を処理するために白人の神格化された女性の秘所にもぐりこんで仕事をします。また別の矮人達は、現代では性病とされる病巣を掻きむしるときの快感を得る為に、わざと発病させた患部を食べさせられるのです。他にも様々な加工を施されたヤプー(日本人)が登場します。

ヤプーと白人の神々との関係が、一番判りやすいのが何と言っても小人に縮小されたヤプーです。彼らは自分の仕えている主人の顔は良く覚えていません。というより良く見ることが出来ない関係なのです。例えばトンネルボーイは白人の体内が仕事場であり、股間で患部に食らいつく矮人にとっては白人の股間が仕事場なので、顔を見る機会がほとんど無いからです。それに山のふもとから頂上にある顔を眺めても、良くは見えないでしょう。その代わり主人の秘所はよく心得ています。主人の秘所こそが、毎日通う仕事場だからです。彼らにとって白人の体が、活躍の場としての世界そのものだといえます。

小説は想像力を掻き立てられて面白いのですが、漫画は直接的に世界を見せてくれます。そして、おそろしくも甘美な作品に仕上がっています。

ところで、この作品中に巨人も登場します。しかし、せいぜい2.5m程度のものなので特に触れて解説は致しません。

Published : 2000.02.23
Update : 2004.09.17

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