漫遊戦記バトルプリンセス・ミツカ

物語について

あらすじは、前編のネタバレになるので、後回し。ネタバレあらすじは、映像を楽しみたいという方は読んでいただいても結構ですが、物語全体を楽しみたい方は読まない方が良いでしょう。

という訳で、解説を先にさせていただきます。

水戸黄門と戦隊ヒーローのミックス作品です。特撮ヒロインものとしては、初めての試みではないでしょうか。面白い目のつけどころです。

悪代官を前にして言う正義の台詞はもちろん、悪代官たちが悪巧みをするあの見慣れたシーン。さらには決まり文句の後の殺陣開始。まさに水戸黄門を始めとする時代劇要素がふんだんに盛り込まれています。とはいえ、しっかりと戦隊ヒーローらしい映像になっています。殺陣も時代劇を取り込んでいながら、戦隊ヒーローの殺陣になっています。

印籠を掲げて血筋の証拠とする代わりに、巨大化することで血筋を示したといったところでしょうか。後編のクライマックスを迎えてから初めて見せる巨大化ですが、巨大化してからのシーンは、十分に時間を取っていて楽しめます。

変身ヒロインピンチ

この作品には、色々な要素が盛り込まれていますが、メインテーマはヒロインのピンチであることに間違いありません。いわゆるヒロピンです。作品全体を通して主人公のピンチシーンやいたぶられるシーンが、こだわりをもって挿入されています。

こうしたシーンが多くなるとストーリー展開は冗長で、趣味の合わないシーンでは飽きたりもしますが、この作品は全体を通して楽しむ事ができるよう工夫されています。

主人公役の真理の苦痛に歪む姿が何回も挿入されていますので、普通なら物語が進行せず冗長となりそうなところです。しかし同じ役者がいたぶられるシーンでも、ミツカ、少年の姉、シルビア、巨大ミツカと、それぞれ役所が違い、きちんと物語は展開していきます。真理のファンにも嬉しく、物語を楽しみたいという方も飽きさせない脚本の妙技です。

巨大化後のシーンは、後編の一番の見所になっています。ミツカと巨大ロボットの対決方法も実に多様で、格闘はもちろん、レーザービーム、緊縛、ロケットなど。さらには巨大ヒロインならではのアクションも凝っていて、足下の自動車を投げつけたりビルに倒れ込んだり、さらにはビルを武器にして振り回すなど、思いつくものは全てやったという感じでした。

ミツカ役の真理の演技は、迫力あります。正に熱演です。もう少し、彼女の美しくも凛々しい顔が拝めたら良かったような気もしますが、苦痛に歪む真理の表情に、エロティシズムを感じない者はいないのではないかと思われるくらいです。

変身ヒロインには、人によって思い入れの部分が異なるようで、例えばボディスーツ姿でなければならないとか、スーツではなくてウルトラマンや仮面ライダーのように皮膚と区別できないようなものでなければならないとか、露出度の高い衣装が良いとか意見も様々あります。それに加えて等身大でなければ駄目だとか、いや巨大化が良いとか、人の趣向は際限なくあるものです。そうした意見をひとつの作品に盛り込むのと、結局中途半端な作品になりかねず、その意味でこの作品はヒロインの形態を絞り込んで取り組んでいるのがポイント高いところです。

ヒロインの演技もさることながら、他の役者の方の熱演もこの作品を素晴らしい者にしています。特に鬼頭役の清水大敬は、助演男優賞ものです。多くの作品で役者として活躍されているだけあって、さすがとしか言いようのない演技です。

この作品のクライマックスであるピンチシーンは、役者が直接対決しない珍しいもので、役者やスタッフの苦労は相当なものだったはずです。しかし画面にそんな苦労の痕跡はみじんも無く、巨大ヒロインと巨大ロボットの対決が楽しめるものになっています。調子づいて巨大ロボットを使う鬼頭と、そのロボットに痛めつけられる巨大ヒロインの姿は、これまでに見た事のないものです。敢えて辛口に言わせてもらえるなら、巨大ロボットがあまりにあっさりとやられてしまったのが残念です。もう少し対決の余韻が欲しいところでした。

ヒロピンフリークの心を満たしつつ、ストーリー展開を行うさじ加減は監督の腕の見せ所でもあります。この作品はバランス良く仕上がっていると思います。松浦幹三監督の次の作品にも期待してしまいます。

(敬称省略)

特殊効果について

数多く特撮を手がけているZENピクチャーズの作品だけあって、特撮のレベルのは非常に高いです。過去の作品と比べて、作品を発表するにつれ着実にレベルが高くなっています。

映像はもちろんですが、特に音のクオリティが高くなりました。サウンドエフェクトが素晴らしく、作品の迫力が写真では全く伝わらないのが残念です。

あらすじ

ミツカは宇宙に名の知れたミト一族の末裔。慎重派のスーケルと、食いしん坊のカークスと共に、宇宙を漫遊しながら世直しをしていた。

彼女の乗る宇宙船の故障を直すために、急遽手近な星、地球に立ち寄った3人組。船を修理して何事も無く、次の目的地に向かうはずだった。しかし船の修理の合間に地球の森を散策していたミツカは、偶然にもアクダイカーンズが少年を誘拐する所に出くわしてしまった。アクダイカーンズは宇宙を股にかけ、悪事を働く秘密結社だ。行きがかり上、少年を助けたミツカ。なんと、その少年に姉と間違われてしまったミツカだった。

間違われたのも無理は無い。ミツカは少年の姉とそっくりだったのだ。アクダイカーンズの目的は、そのミツカとそっくりの女科学者から研究の秘密を聞き出そうとしていたのだ。アクダイカーンズの悪行を見過ごす事は出来ない3人組は、隠密シルビアを加えて姉の救出を試みた。

少年の姉の救出には成功したものの、アクダイカーンズの鬼頭が現れ、鬼頭の電撃によってスーケルとカークスは倒されてしまった。そしてミツカも鬼頭の電撃を受け、結局ミツカがアクダイカーンズの手に落ちてしまった。(ここまで前編)

一方、アクダイカーンズから逃れる事ができた少年と姉は、ミツカの従者、スーケルとカークスの復活に成功していた。スーケルとカークスは、実はミツカを守るロボットなのだ。スーケルとカークスの機能はそれだけでなく、ミツカの変身の秘密でもあった。

ミツカ絶対絶命のピンチに間に合ったスーケルとカークス。ミツカとスーケルとカークスの3人が揃い、ようやくミトブルー、ミトレッド、ミトイエローへと変身することができた。

変身に成功したミツカ達は無敵だった。アクダイカーンズを倒すのは時間の問題だった。しかしアクダイカーンズの首領、鬼頭を倒すのは容易ではなかった。鬼頭は巨大ロボット攻殻機動103号に逃げ込むと、街ごとミツカ達を倒そうと暴れ出したのだ。

こうなったらミツカ達も伝家の宝刀を使うしか無かった。が、それを拒むミツカ。しかし方法は他になかった。

しぶしぶミツカはラージチェンジャーを手にすると叫んだ。

「クレストパワーオン!」

その途端、ミツカの体は巨大化をはじめると同時に変身が解けていった。一方スーケルとカークスは、ミツカのプロテクターへと変身し、ミツカはプロテクターを身に纏い、巨大な姿でビル街に現れた。

ミツカがいやがったのは巨大化して露出度が増すだけでなく、体の大事な所にスーケルとカークスを纏わなければならないことだった。プロテクターには違いないが、元の2人の姿を考えると嫌になるのだった。

鬼頭は、突然自分の前に現れた巨大ミツカにひるんだが、それもつかの間だった。すぐに巨大ロボットの力を確信した鬼頭は、ミツカの体を執拗にいたぶるのだった。だんだんと高揚していく鬼頭に対し、巨大ロボットにされるがままのミツカ。果たして巨大ロボットを倒す事が出来るのだろうか・・・

Published : 2010.02.27
Update : 2010.02.27

Battle Princess Mitsuka Vol.2

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