鏡の国のジェニファー

雑誌「ホラーWooPee」VOL.73 より

八神健 作品

あらすじ

「借りた本無くしたくらいで、なんでシカトされなきゃなんないのよ」

ありすは憤慨していた。散らかった部屋の真ん中にあるベッドに勢いよく倒れ込み周りを見回すと、そこにはかわいい人形があった。

「私の友達は・・・あんただけよ」

その時、時計の針が0時を指した。すると一瞬あたりが暗くなり、再び明るくなったときありすが目にしたのは、自分の部屋にある時計と鏡だけがある部屋だった。

「ここは、鏡の国ですわ」

ありすの背後から少女の声がした。少女が言うのには、午前0時、鏡の国の時計と外の世界の時計が同じ時刻を指した瞬間が、ふたつの世界をつなげたというのだ。

ありすは少女の顔に見覚えがあった。その顔はありすが幼いときから大切にしている人形、ジェニファーの顔だった。ありすはジェニファーと楽しい時を過ごしたが、明け方になって元の世界に戻りたいと思った。

「友達はいつも一緒にいなくては、いけませんわ」

ジェニファーは穏やかに言った。ありすは、あの時のことを思い出していた。あの時の罰を今受けているのかもしれないと考えていた。そう、幼いあの時ありすは...

解説

ホラー雑誌に収録された作品ですが、この作品はホラーというよりもファンタジーですね。

友達って一体何なのでしょうか・・・信じあえる関係のことをそう呼ぶのでしょうか。この作品では、そういった友達の関係について、ありすの幼年期のトラウマを通して見つめます。あなたは友達に嘘をついたことはありませんか。それを謝りたいと思うっても、会う機会を失ってしまったことはありませんか。ありすは、それを克服することができました。しかしそれは、ありすが新しいトラウマを抱えてしまうことを意味していたのです。ありすの場合、鏡の国へ再び行くことができれば、真の意味で克服することができるのです。さて、ありすは克服できたのでしょうか。

Published : 2000.02.02
Update : 2004.09.17

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