異空間神話

ABNERS Vol.6

いくたまき 作品

あらすじ

プロローグ

果玉市遠山町8-15にそれは立っていた。不思議な入居者募集の広告。それを除けば、ごく普通のアパート。それが、あぶな荘。しかしそこに住むのは、一般社会と折り合いをつけられないエスパー達だった。

第2部 Vol.6 異空間神話

「僕は秋の海が好きだ・・・」

伊丹正一(28)は、落ち込みながら、あぶな荘の連中と空中浮遊をしていた。そのときだった。声をかけてきたのは、一人の漁師だった。

漁師の話では、悪い亜空間が海上を浮遊し、村の娘を飲み込んだのだというのだ。そしてエスパーの力を見込んで、その悪い亜空間をやっつけてほしいというのだ。

そこで、伊丹、室山、相田、アキナの4人は海上に小舟で乗り出し、集中思念ピラミッドパターンを形成すべく麻雀を始めたのだった・・・

作品解説

タイトルになっているアブナーズと、聖書にでてくるアブネルとは無関係です。おそらく、その日本語的な語感からくる、あぶない者達といったところにタイトルの所以があるのだと思います。

そうしたタイトルからくるイメージ通り、登場人物らは、たしかにある意味であぶない連中です。ちょっと常軌を逸した、ちょっと貧乏臭いエスパー達がこの作品の主人公なのです。エスパーといっても、大々的に力が使われるというようなことはありません。あくまでもちょっとであり、そしてこじんまりとした笑いを誘うものです。そうしたところが、日本的なペーソスが魅力的な作品に仕上がっています。1980年代の漫画には、こうしたペーソスを感じさせる作品が多かったのです。

主人公は一応、相田博ということになっていはいますが、登場人物らの強烈な個性のため、主人公が埋没してしまう話も多く、事実上誰が主人公ということもなく一話完結で進行して行きます。感性で描かれた作品です。女流作家の描く作品は、感性的な作品が多いように思いますが、この作品もそうした女性らしい作品であるといえるでしょう。

物語解説

パロディ作品ですね。元ネタは志水圭氏の「時空間神話」ですが、光瀬龍氏と萩尾望都氏の漫画「百億の昼と千億の夜」をブレンドしてあります。細かいことを言えばそれ以外の作品もミックスされていますが、このどちらかの作品を知っている方なら、十分に楽しめるはずです。

さて異空間になだれ込んだ4人組ですが、異空間を渡り歩くたびにサイズが変化します。しかもなぜかアキナの大きさが大きめ。超巨大という訳ではありませんが、背が高いというようなレベルではありません。絶対的な尺度のない世界のことなので、あくまでも相対的にですが、2〜5倍の大きさになります。もっとも一番巨大になったのは伊丹で、彼は10倍以上の大きさにまでなります。帰ってきた村の娘も・・・という、おまけがちょっと嬉しいですね。

Published : 2000.03.20
Update : 2004.09.17

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