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表現力を高める

建物の表現

2009.06.27

おさらい

以前の記事で、箱を使って建物を作成して巨人を表現しました。建物するときに、四角い箱に絵(テクスチャマップ)を貼付けて制作しました。箱に絵を貼付けただけでも、それなりに効果をあげることができることは判りましたが、やはりもう少し建物にも立体感が欲しいところです。

建物を3Dモデルで作成するのも良いのですが、ここはもう少しPoserで粘ってみることにします。実際、3Dモデルの制作は、ただの箱ものでも敷居が高いのも事実です。

立体感の表現

何も実際に3Dモデルで立体的に作らないまでも、立体感を表現する方法は2つ用意されています。一つはバンプマップで、もう一つがディスプレイメントマップです。これらは、2Dのイラストを基にして質感を得るためのもので、例えば絨毯や畳のような立体的な質感を得るための機能です。細かな凹凸をモデルで表現すると膨大なデータ量になる上に、その計算に費やす時間も比例して増えてしまいます。そうした細かい凹凸などによって生まれる質感を表現する機能が、バンプマップとディスプレイメントマップなのです。詳しくはこちらのページで解説しているので、一度お読みいただければと思います。

このうち、ディスプレイメントマップを使って建物の窓などを表現してみることにします。

サンタクロース この絵は、クリスマスのときにG-ZONEのトップを飾ったものですが、この衣装のモコモコっとした表現にディスプレイメントマップが使われています。このような表現では大活躍のディスプレイメントマップですなのですが、今回は建物の利用するために使います。たとえ真四角なビルであっても、その建物の表面はでこぼこしています。一般的な構造のビルでは、窓や入り口の部分は引っ込んでいます。そのような部分にディスプレイメントマップを使ってみます。まずその仕組みの理解を兼ねて、簡単な実験をしてみることにします。

ディスプレイメントマップの実験

ディスプレイメントマップを使ってどんな表現が可能かを実験してみます。水面を作る方法についてはこちらのページに解説した通りです。水面のようなフラクラルな図形の方がディスプレイメントマップの表現に適しているような気もします。しかしレンガやタイル表現にも利用可能な方法なので、建物全体を表現することも不可能ではないのです。ということで早速実験です。

まず箱を一つ用意して、それにディスプレイメントマップを設定してみます。ディスプレイメントの設定はマテリアルルームに入って行います。マテリアルルームに入ったら、早速ディスプレイメントの所をクリックしたまま紐を引っ張りだします。そして2Dテクスチャからレンガを選択します。

ノード作成

レンガノードはそれっぽい色で構成されていますが、白黒に色を変更します。ディスプレイメントマップは凹凸を表現するためのイメージなので、白黒のコントラストだけが必要なのです。色はあっても構わないのですが、調整していくときに邪魔な存在になりがちなので、リンクしたときに白黒にしてしまいます。またデフォルトのディスプレイメント値はちょっと大きすぎるので、ここでは0.003ぐらいに調整しています。

ノード作成 レンダリングされた箱

これでレンダリングしてみると、ただの箱がレンダリングされるだけになります。何が不足しているかというと、デフォルトではレンダリング設定の「ディスプレイメント」が無効になっているからです。ディスプレイメントマップを使うときには、忘れずにレンダリング設定を確認しましょう。

レンダリング設定 レンダリングされた箱

2次元のデータで、3次元の表現を付加して、3次元のモデルを複雑な形状に変化できることが理解できたと思います。白いところが飛び出して表現される訳です。真っ黒な部分は、元のモデルの表面に位置します。灰色など中間色を使いこなすと、より凹凸の具合に変化を持たせることができます。グラデーションのような徐々に変化する階調なら斜面や曲面も表現できます。

ビルのためのマップ

ビルディングを作る前に下準備が必要です。用意する3Dモデルは箱ですが、その箱をビルのように見せかけるために一組の数枚の絵を用意します。前回の作例のビルで利用したものを使って、どのような絵が必要か説明します。

マップ マップ テクスチャ マップ
反射マップ 拡散マップ テクスチャ ディスプレイメント

これらはマップと呼ばれています。マップを使うことで、沢山の部品がつけられたような複雑な物体でも、取り付けられた多くの部品の質感を表現することが簡単にできます。

マップ 反射マップは、モデル表面の反射率を変えるためのマップです。反射率が高いと金属のような質感に、反射率が低いと土や漆喰のような質感になります。言い換えるなら反射率が高いと光沢が出て、反射率が低いと光沢がなくなります。3Dモデルが一様な反射率の場合はマップを使わずに、反射値を変えることで質感を調整できます。建物のように、様々な部品が組合わさっているようなときには、反射マップを用意して表現します。反射マップの白っぽい所ほど反射率が高く、黒っぽい所ほど反射率が低くなります。この例では、窓とそれ以外の反射率を決めるためにマップを用意しています。もし看板などがあれば、その部分にも違った反射率を設定するなどして、よりリアルな建物をイメージしてマップを作成します。

マップ 拡散マップは、光の乱反射の度合いを決めます。艶を決めると言い換えても良いでしょう。光沢と違うのは、映り込みです。もっとも艶がなければ映り込みもありませんから、拡散マップと反射マップは密接な関係にあると言えます。拡散と反射の関係は別の記事で、3つの球体を使って解説していますので、詳しくはそちらをご覧いただくことにして、ここでは説明を先に進めることにします。拡散マップの白いところほど拡散値が高くなり、黒いところほど低くなります。

また、実際の物体を良く観察すると、一見艶がないように見える物でも、若干の艶が残っていることに気がつきます。土のような物でも、航空写真など高く遠いところから撮影された映像を見ると、若干の艶を感じることがあります。建物の質感をそれらしいものに仕上げるためには、遠目に見た建物の質感を表現しなくては、巨人と建物の関係がリアルにならないことに注目してください。

マップ テクスチャマップは見た目に最も理解しやすいマップです。物体に色を付けるためのマップです。物体が単色であるなら、マップを使う必要はありません。何度も繰り返すようですが、マップは細かな表現を容易に行うことができる便利な物です。テクスチャマップは、最たる物であると思います。

建物をよりリアルな感じにするためには、ウェザリングなどの汚し技法を使います。ウェザリングは模型制作では良く使われる技法ですが、3DCGでも模型と同様にウェザリングは良く利用されます。むやみに汚すのではなく、建物らしい汚れを表現しなければなりません。例えば地面付近で埃っぽくなった壁面や、窓枠から流れ出た雨の跡などを絵を描くようにして表現します。テクスチャマップがリアルに建物を表現するなら、モデル形状がただの箱であってもリアルに見せることも可能です。また良く利用されるテクスチャマップの作成方法として、実際の建物の写真を加工して使う方法もあります。

マップ いよいよディスプレイメントマップです。ディスプレイスメントマップも他のマップ同様にイメージとして作成します。1つのマップが表すのは、面の形状ということになります。先の実験で説明しましたが、マップの黒い部分が元々の面の高さで、明るい色になるほど凸部あるいは凹部の量が大きくなります。ディスプレイスメントの値を正の値にすれば凸形状、負の値にすれば凹形状を表現できます。

この作例では、窓を凹形状で表現していますので、ディスプレイスメントの値を負の値にしてあります。

マテリアルを作成

これから作成するビルは次の3枚のマップを使って作ります。これらのマップを使うために、箱に新しいマテリアルを追加します。

マップ マップ マップ
反射マップ 拡散マップ ディスプレイメント

まず箱を用意します。箱を用意したら編集ツールのグループ編集のボタンを押してください。グループ編集ボタンは下の図のオレンジ色のボタンになりますが、ボタンを押すまでは色はグレーですので、探すときには色で探さずにアイコンで判断してください。

編集ツール

このグループ編集の目的は、箱にビルの側面を定義することにあります。どの部分が側面であるか定義し、その側面に用意したマップや、その他のパラメータを設定するのです。その元となる側面の定義をここで行います。

グループ編集グループ編集のモードでは、モデルは黒っぽくなります。もしグループ化された面があれば、黒い面ではなく赤い面として表示されます。箱の側面となる部分を全て1つのグループにして赤くします。

グループ編集モードでは右の図のようなパネルが表示されています。最初にこのパネルの「新規グループ」ボタンを押してください。次にこの黒っぽい箱の側面を赤い面にするために、その部分を直接クリックしたりマウスの右ボタンを押したままにしたときに表示される白い矩形(下図)で囲んで選択します。

編集中の箱 編集中の箱

上の左図で白い矩形で囲まれた部分が、右図のように赤い表示に変わります。この例では少し取りこぼれてしまった部分があるので、さらにクリックするなどして、側面となる部分全体が赤くなるようにします。もし余分な部分が赤くなってしまったときには、グループ編集パネルの「全て削除」ボタンを押して最初からやり直します。箱を回転させながら作業を進め、全ての側面となる部分が全て赤く表示されたら、このグループをマテリアルとして登録します。

ダイアログマテリアルとして登録するには、グループ編集のパネルにある「新規マテリアルとして作成...」ボタンを押します。ボタンを押すと右図のダイアログが表示されますので、名前を適当につけて「OK」ボタンを押します。これで、赤く表示された部分はマテリアルとしてPoserのマテリアルルーム機能でモデルの一部分として取り扱えるようになります。

マテリアルの定義

マテリアルルームマテリアルルームに入ります。マテリアルルームでは、マテリアルとして登録されている部分ごとに、表面がどのように見えるかを定義できます。先ほど作成したマテリアルに、マップなどの定義を行います。メテリアルルームで、先ほど定義した側面のマテリアルを選択するには、下図のようにマテリアルルームのウィンドウ上部にあるマテリアルをクリックして選択します。

マテリアルルーム

マテリアルを側面に切り替えたら早速設定を始めます。

ディスプレイスメントに2Dイメージをマッピングします。具体的にはディスプレイスメントのプラグをドラッグし、白い紐を引っ張りだします。その状態でマウスボタンを放すとメニューが表示されるので、下図のようにメニューを操作してイメージマップを選択します。

マテリアルルーム

同様に拡散色、鏡面色、反射色に用意したイメージをマップしていきます。最終的に、下図のように定義します。

マテリアルルーム

建物に色を着けたいときには、拡散色に色を付けます。拡散色に色を着けるためには、拡散色の白い四角形のアイコンをクリックして表示されるカラーパレットを使います。色を決めると、拡散色の四角形の色が定義した色に変わります。

これで建物は完成です。ひとつ完成したなら、建物だけのファイルとして保存しておくと後々便利です。

建物を使って作品にする

建物を1つ作ったなら、それを複製して街並にするのは簡単です。箱を選択した状態で、Poserの編集メニューを開くと「複製」という項目がありますので、それで箱を複製します。全く同じ場所に重なって複製が作成されるので、それを適当に移動して街並を作ります。建物の間に人間を配置すれば、簡単に作品に出来上がります。

作品として仕上げるにはレンダリングを行いますが、レンダリングをする上でポイントとなるのは…

  1. ポーズと表情
  2. 照明
  3. カメラアングル

これらをうまく調整して作品に仕上げていきます。どれも重要なのですが、照明は実際にレンダリングしてみないと分からないので、照明のカン所をつかむまでは時間的に多くの時間を費やすことになります。レンダリングしては調整するという作業を根気よく繰り返して作品を仕上げてください。

下の作例は、建物を500%の大きさに設定した後に複製。5棟の建物の間に、ジェシーを配置したところです。照明には1つの無限光を太陽に見立て、環境光としてIBLライトを1つ追加してあります。また、ジェシーの右側にある建物だけ、窓の部分に反射の設定を施してあります。カメラの焦点距離は30。かなりの広角レンズです。こうした設定はまたの機会に解説します。

創意工夫があれば、Poserだけで十分作品を作れると思います。

GTS作品

応用作品