Hall

はじめてのPoser

製作手順のおさらい

2007.05.13

大まかな機能

前回は作品製作の流れについて説明しました。この作品に手を入れていきながら、製作のノウハウ等を解説していこうと思うのですが、その前にもう一度、作品の製作手順をおさらいしたいと思います。やはり全てを解説するには至りませんが、今度はPoserの機能説明を兼ねて、前回よりも詳しく説明します。

と言うのも、いきなり作品に手を入れていくのを見てもらっても、初めての方には、きっと出口の見えない暗いトンネルの中でトンネル自体の細かい説明を受けてもつまらないだろうと思うのです。それなら最初にちょっとだけ、つまらない説明を聞いてもらった方が良いかなと思うのです。ということで初めての方向けですので、Poserの機能説明等不要という方に退屈な内容になっています。

とりあえずざっとPoserの機能を列挙すると、こんな感じ。

  • 作品を作成する時に表示するウィンドウ
    • プレビュー
  • オブジェクト(3Dモデル)を管理するライブラリ
    • フィギュアライブラリ
    • ポーズライブラリ
    • 表情ライブラリ
    • 髪ライブラリ
    • 手ライブラリ
    • 小道具ライブラリ
    • ライトライブラリ
    • カメラライブラリ
  • 作業目的毎に機能を切り替えて使うルーム
    • ポーズルーム
    • マテリアルルーム
    • フェイスルーム
    • ヘアールーム
    • クロスルーム
    • セットアップ
    • コンテンツルーム
  • レンダリング機能
    • FireFlyレンダリングエンジン
    • Poser4レンダリングエンジン
    • IBLライト
    • 環境閉塞
    • スケッチ:
  • アニメーション制作関連の機能
    • フレーム補完
    • アニメーションレイヤ
    • トークデザイン(リップシンク)
    • モーションキャプチャファイル(BHT)
    • オートバランス

まあ、こんなところで列挙しなくても、リファレンスマニュアルに全て書かれています。なので詳細はリファレンスマニュアルやチュートリアルを見ていただく事にして、ここでは大いに端折った説明でいかせていただきます。

実際の画面

Poserを起動すると、こんなアプリケーションウィンドウが表示されます。

Poser全体

これはMacOSのものですが、Windowsでも同じウィンドウが表示されます。アプリケーションウィンドウの中には、パレットウィンドウがいくつか表示されます。ウィンドウ枠のないパレットもありますが、全てウィンドウなのでタイトル部分をドラッグして好きな場所に配置することができます。実際、上のスクリーンショットの状態は、デフォルトのものではありません。

初めて起動した時には、デフォルトで1体だけキャラクタが配置された状態になります。伝統的にこのキャラクタは男です。Poser7ではサイモンが両手を広げて立っている状態になります。両手を広げたポーズは、全ての関節のパラメータがゼロになっているときのポーズです。

邪魔なキャラクタはさっさとdeleteキーで削除して、ジェシーを配置して服を着せて髪をかぶせたところが上のスクリーンショットの状態です。キャラクターや服などの選択は、ライブラリウィンドウを使って、オブジェクトライブラリから選びます。キャラクタは通常坊主頭ですので、ヘアールームを使って髪の毛を生えさせるか、ライブラリの中から適当な髪型のオブジェクトを選んでかぶせます。ヘアールームを使って髪型を作るには時間がかかるので、前回の作品では髪オブジェクトを選んでかぶせてあります。

スクリーンショットに目を戻すと、ウィンドウの上部にタブが並んでいて、そこにはポース、マテリアルなどという名称が見て取れます。下のスクリーンショットはアプリケーションウィンドウ上部のアップです。

タブ

このタブを押す事でルームを切り替えることができます。右端にはライブラリパレットがあり、このパレットを操作してオブジェクトを選択します。このスクリーンショットでは下の端に折り畳まれて見えませんが、ウィンドウの下の方にアニメーションパレットがあります。左側にはライトやカメラを操作するボール上のインターフェースがあります。またこのスクリーンショットでは閉じてありますが、関節やオブジェクトの位置を指定できるパラメータ特性パレットがあります。このパラメータはプレビュー画面で直接オブジェクトをドラッグしても変更できる、つまりポーズや位置を変えられるのですが、仕上げの時にはパラメータを指定した方が都合が良い事もあるので重宝しています。

画面にはボタンの他に至る所に▼印のアイコンがあります。このアイコンをクリックすると、ポップアップメニューが開きます。▼印は、そこにポップアップメニューが隠されていることを表しています。

キャラクタ

ショートカット ライブラリパレットからキャラクタを探して選択します。キャラクタはPoserのバージョン毎にフォルダに分けて入っています。ジェシーはPoser6のキャラクタなので、Poser6のフォルダの中に入っています。ライブラリのフォルダ移動にはサムネイル画像の再描画が伴いますので遅くてまどろっこしいところがあります。そうい方のためにメニューを表示させる方法もありますので、覚えておくと便利です。

Poser7には新機能でコンテンツコレクションという機能があります。この作品のようにオブジェクトの数が少ない時には必要ないかもしれませんが、大量のオブジェクトを扱うようなときには便利だと思います。リファレンスマニュアルの第5章に載っていますので、ここでの説明は省きます。

ライブラリに沢山のジェシーが登録されています。どのジェシーを選択してよいのか悩むかもしれません。実はどのジェシーを選択しても、ジェシー本体のメッシュオブジェクト(形状データ)は同じものが読み込まれます。違うのは、服を来ていたり、モーフと呼ばれるデータが違うだけです。服やモーフは後で追加できますから、ここではリストの一番上にある一番シンプルなデータのジェシーさんに登場してもらうことにします。無事にジェシーを選択して配置すると、空間には裸で坊主頭のジェシーさんが立ちます。裸ではちょっと目のやりどころに困ってしまうし、坊主頭はちょっと怖いので、早速服と髪の毛を用意することにします。

裸のジェシーさんの股間はツルツルです。割れ目も見当たりません。納得がいかないということなら、Poserのメニューにある「フィギュア」から「生殖器」を選択して有効にしてください。すると割れ目が表示されます。ツルツルなのがご不満の諸兄は、ヘアールームに入っていただいて、好きな場所に好きな形で好きな長さの好きな形状のヘアーをはやす事ができます。がんばってみてください。

さてジェシーを選んだ理由ですが、標準で用意された服の種類が、Poser7で追加されたシドニーよりもジェシー用の方が多いので選択の幅が少しはあるのです。とはいえ、ジェシーの服も少ないので、ヌードがいいという諸兄は例外としても、いつかは好きな服を作るか買ってくることになると思います。なぜキャラクタ毎に服が用意されているのかというと、キャラクタによって間接の形状や設定が異なるので、それぞれのキャラクタにあわせた服を作らないと、服で体を上手く覆うことができなくなってしまうのです。キャラクタが前屈みになれば腹の部分の服は収縮し、背中の部分は伸びたりするのです。袖のある服やズボンなどは、もっと複雑な変形をしてくれます。この変形がなければ、着心地の悪い服どころか、服にすら見えないかもしれません。ここではビキニを使っていますが、露出部の多いビキニでさえ、別のキャラクタ用のビキニでは上手く着ていられなくなるのです。

ショートカット ビキニは、ビキニトップとビキニボトムに分かれてライブラリに登録されています。ビキニトップそれとビキニボトム(ライブラリではビキニパンツと表記)を選択しますと、ようやくインターネットで公開できる状態になりました。しかし、まだ丸坊主です。ヘアールームに入って、髪の毛を伸ばしたり切ったりして作成しても良いのですが、ここでは簡単に髪オブジェクトをかぶせることにします。

髪も服と同じように、キャラクタ毎に用意されています。服ほどシビアではないので、他のキャラクタ用の髪を被せることも不可能ではありませんが、ここではジェシー用の髪オブジェクトから「ライトエッジボブ」を選択しました。髪もついてビキニを着ると、プレビューには右のように表示されました。

あとはビルに見立てる箱を小道具の基本セットから用意すれば、一応必要な3Dオブジェクトは揃ったことになります。

キャラクタにポーズをつける

Poserで作品を制作する時、ポーズルームで作品の仕上げをチェックしながら、他のルームと行き来することになります。ポーズルームがPoserのメイン機能であることは間違いないでしょう。それだけにいっぺんに説明できるような代物でもないのです。ということで、今回は超特急でポーズを仕上げられる方法として、ポーズライブラリから適当なポーズを探して使う方法を紹介します。

ポーズライブラリ ライブラリパレットを開いてポーズライブラリに入ります。ポーズライブラリには、モーフターゲットオブジェクトも含まれていて、初めて覗くといったいどの階層をたどっていったら良いのかすら想像がつきません。

ジェシーのポーズは、Poser6の中にありそうですが、その中にあるポーズはモーフターゲットです。モーフターゲットについて今は詳しく説明しませんが、体の形状を変化させるためのデータだと思ってください。今欲しいのは、体の関節のパラメータが納められたポーズデータです。こういったポーズはPoser5以前では、キャラクタ固有のデータとしてキャラクタ毎に用意されていましたが、Poser6以降では共通のデータとしてユニバーサルポーズというフォルダに納められています。

キャラクタの名前にG2とついているものがあります。G2の意味はGeneration2。つまり第2世代のことです。G2はPoser6以降で使える情報が付加されたもので、同じ名前のキャラクタに特殊なモーフターゲットがなどが追加されています。

ユニバーサルポーズの中を見ると、行動や目的毎に分けたフォルダにポーズが納まっていること判ると思います。今回使用したポーズは、古い日活映画の主役がとるような臭いポーズですが、これは、ユニバーサルポーズ→スタンディング→立つ、というようにフォルダ階層を追いかけてもらうと「立つ15」という名前で、サムネイル画像が表示されていますから、これを選択することで選べます。

ジェシーポーズ 右の絵は、ジェシーにポーズを適用してみたところです。ビキニどころか髪の毛もずれてしまいました。ジェシーの動作にビキニや髪が追従しなかったのが原因です。あるキャラクタの動作に服等のオブジェクトが追従するためには、キャラクタに服を「着用」させなくてはなりません。着用という関連付けがされることで、単純に服がキャラクタの動作に合わせて移動するだけでなく、必要なら変形すらしてくれるのです。

キャラクタ毎に変形する情報を持った服オブジェクトですが、着用という関連付けなしでは変形情報が活かされません。なぜこんな面倒なことをしなければならないのかというと、同じキャラクタを用意したときに、どのキャラクタにどの服を着せるのかを指示できるようになっているからなのです。

ということで、ジェシーにちゃんと服を着用してもらいます。着用させる服を選びます。オブジェクトを選択するには、2通りの方法がありますが、オブジェクトが少ない時にはプレビューウィンドウに表示されたオブジェクトを直接クリックするのが簡単でしょう。選択中のオブジェクト名は、プレビュー画面のウィンドウバー左に表示されていますので、オブジェクトをクリックした時には、正しいオブジェクトが選択されているか注意する癖をつけた方が良いでしょう。服を選んだらPoserのメニュー「フィギュア」から「フィギュアに着用」を選択します。するとダイアログが表示されますので「▼なし」というところをクリックします。すると右のように着用先のフィギュアがポップアップリストで表示されますので、ジェシーを選びOKボタンを押してダイアログを閉じます。この作品の場合、この作業をビキニトップ、ビキニボトムについて行います。

髪は着用では関連付けできません。こうなってしまったのは、髪を選択して適用ボタンを押したとき、プレビューでジェシーが選択されていなかったのが原因です。例えばビキニを選択して適用した後で髪を選択して適用したときには、ビキニに対して関連付けされてしまいます。こうなったら一旦削除するしかありません。

選択されたオブジェクト名 プレビュー画面で現在選択されているオブジェクトの名前が、プレビュー画面の左上に表示されます。右の例では「ジェシー」の「ボディ」が選択されていることが表示された名前から判ります。

メニュー 髪オブジェクトをクリックをクリックして髪が選択された状態を確認したらDeleteキーを押して削除します。今度はしっかりとジェシーを選択しておきます。しっかり選択したいとき、プレビューの▼印を押してポップアップメニューから操作する方法も有効です。

ジェシーが選択されているのを確認したら、ライブラリから適用したい髪を選択して適用します。これでジェシーの動きに追従するようになりました。

ポーズを適用した後、そのままでは変な所があると思います。この場合、右腕が右足の上にありますが、その間に隙間があるので肘をついた姿勢としては不自然です。また、腰に当てているはずの左手は腰の中に埋まってしまっています。この作例とは違った状態になるかもしれませんが、とにかく気になる所を微調整する必要があります。

左手アップ まず、どのくらい浮いているのか、もっとアップで確認したいと思います。そんな時には、カメラを切り替えてアップにします。この場合左手をアップにしたいので「ハンドカメラ左」に切り替えます。カメラの切り替えは、カメラコントロールで行いますが、カメラコントロールの使い方は、後に詳しく説明しますので、ここでは切り替えたということで説明を続けます。

左手をアップにすると、左手の部分がアップになります。腰の中に埋まっている状態のときには、左手が調節表示されないかもしれません。とりあえず左手が腰から出てくるように調整します。

これを修正するには、左腕のパラメータを調整増します。どの部位の体のパラメータをどのように調整するか判断するときには、実際に自分でポーズをとってみると判ります。自分でポーズをつけてみると、この場合には左腕の屈伸を行えば腰に左手をくっつけられることが判ると思います。ということで、左腕を選択しますが、左腕がプレビュー画面からはみ出したところにあるので、マウスクリックでは選択できません。そういったときには、前に髪オブジェクトを適用するときに説明したポップアップメニューを表示させてそこから選択します。ポップアップメニューは▼印の所をクリックすると表示されますが、体の部分を選択するためには、まず「ジェシー」が選択されている状態で左から2番目の▼印をクリックして選択することになります。

パレメータパレット 左腕を選択するとパラメータパレットに「左腕」と表示され、同時に左腕の買うパラメータが表示されます。数値は多少違うかもしれません。屈伸を調整するのですが、屈伸のパラメータは「水平屈伸」と「屈伸」の2つがあります。

水平屈伸は腕を前後に曲げる具合を調整します。この場合は、水平屈伸の値を変更すると左手が前後に振られることになります。屈伸は上下に腕を曲げる具合を調整します。この場合は、屈伸の値を変更すると左手が左右に振られることになります。屈伸を調整することで、腰に手を当てられるはずですが、手の前後の位置も調整した方が良いときには、水平屈伸も調整します。

パラメータの調整の仕方は2通りあります。一つは、コントロールパネルの屈伸または水平屈伸と書かれたすぐ下のダイアルをマウスで水平方向にドラッグしてダイアルを回す方法です。もう一つは、値をクリックしてちょっと待つと入力可能なフィールドに変化するので、そのフィールドにキーボードから値を直接書き込む方法です。大雑把に動かすときにはマウスでダイアルを操作して、微調整は値を直接入力するのがお勧めの方法です。

右腕が微妙に浮いているのも、左手の時と同様に直します。右腕の浮き具合は、右腕のパラメータで調整できるはずです。実際にはビルに脚を掛けたポーズにするので、ビルを配置してからポーズの微調整を行うことになります。キャラクタの流れでポーズをつけるとこまで一気に説増しました。

ビルを作る

キャラクタやキャラクタ関連の服とか髪とかを除いた3Dモデルは、全て小道具のカテゴリに入れられています。ビルのような大物は用意されていませんが、部屋とかテーブル等が用意されているので、屋内のシーンならすぐに作成する事ができます。これらの3Dモデルを使うなら、部屋の中で小人を大冒険させるような絵を制作するのが一番手っ取り早いと思いますが、今回は敢えて巨人を表現した作品に挑戦しました。その理由は追々判明してくるので、ここでは説明を省かせていただきます。

まずビルとなる箱を用意します。箱のような基本的な立体は、基本アイテムというフォルダにまとめられています。このフォルダは小道具カテゴリの直下に置かれていますので、すぐに見つけることができると思います。箱を選択してダブルクリックまたは適用ボタンを押すと、空間に箱が用意されます。ジェシーがいる状態で箱を適用すると、ジェシーの足下に箱が置かれますが、ここでは説明のために箱だけの空間を用意しました。

この箱に化粧を施してビルに見せる作業に入るため、マテリアルルームに移動します。マテリアルルームのウィンドウはシェーダーウィンドウと呼ばれ、シンプルな設定方法ができるシンプルシェーダー表示と詳細な設定方法ができる詳細シェーダー表示を選ぶタブがついています。ここでは常に詳細な設定方法について解説したいので、マテリアルルーム=詳細シェーダー表示だと思ってください。

この箱の色ですが艶のある白い物体として定義されています。物が見えるという状態は、物体から放たれた光が目に届いていることに他なりません。物体自身が光を放つこともありますが、他から放たれた光を受けて放つ光もあります。照明器具は光が放つ物体ですが、今回使う箱は、光を受けてその光を反射することで光を放つタイプの物体ということになります。反射の仕方によって、色がついたり艶があったり、また鏡のようになったりします。反射の仕方を数値化して、値として編集する機能がマテリアルルームです。

ビルの化粧の仕組みを知る前に、少し実験をします。箱では艶の具合が良くわからないので、実験のためにボールを3つ用意しました。マテリアルルームでそれぞれのボールに違った設定をして、レンダリングした結果が下の絵です。

マテリアル選択

この3つボールは、拡散色と反射色に違いがあります。一番左のボールは、拡散色が白で反射色も白です。このときボールは艶のある白いボールに見えます。この例では光の当て方のために、見ようによっては銀色に見えなくもありません。中央のボールは、拡散色が赤で反射色は白です。このボールは艶のある赤いボールに見えます。一番右のボールは、拡散色が赤で反射色は黒です。このボールは艶のない赤いボールに見えます。

この実験を通して、拡散色と反射色の関係が何となく実感できたのではないかと思います。この拡散色に色の代わりにテクスチャマップを貼ると、テクスチャマップに描かれた絵が物体の表面を覆うように貼られます。つまりビルを表現するには、箱の拡散色にテクスチャマップを指定することで表現できるということです。

拡散色にテクスチャを設定するには、ノードと呼ばれるパーツを拡散色に接続することで行います。拡散色にテクスチャを貼るためのイメージマップノードを新規に接続するには次のようにします。

新規ノードの作り方

箱の外観 新しく追加されたイメージマップノードのイメージソースは「なし」になっています。このノードにテクスチャマップを関連づけするためには、この「なし」となっている部分をクリックし、表示されたファイル選択ダイアログで読み込むテクスチャを指定します。正しく指定されると箱にはビルの絵が貼り込まれています。

このままではビルらしくないので、縦横比を変更します。キャラクタのポーズをつけるときに散々お世話になったパラメータパレットを見ると、箱の位置や大きさ等を決定するパラメータが並んでいます。とりあえずここの「x拡大縮小」の値を300%に、「y拡大縮小」の値を200%に変更してみます。するとだいぶビルらしくなります。さらにカメラコントロールを使ってカメラアングルを低い位置から見上げるように変更すると、ずいぶんとビルらしくなります。しかしこのままだと、ビルの側面が変な感じです。側面には正面とは違う絵を用意して貼ることにします。

テクスチャはオブジェクトに直接貼るのではなく、オブジェクト上にあるマテリアルに対して貼ることになります。マテリアルとは、オブジェクトの表面を分割した面のことで、どんなオブジェクトでも最低1つのマテリアルが存在します。実は、ビル正面のテクスチャを貼ったのは、箱の「プレビュー」マテリアルです。プレビューは全体を覆うようにして存在するマテリアルなので、これにテクスチャを貼ると全体に影響するのです。側面だけ別のテクスチャを貼るためには、側面だけのマテリアルを用意する必要があります。

マテリアルを作るには、まずポリゴンのグループを作成し、そのグループをマテリアルとして登録する作業をしなければなりません。かなりややこしいですね。つまり作業はこうなります。

  1. ポーズルームでグループを作成
  2. グループからマテリアルを作成
  3. マテリアルルームに移動
  4. テクスチャを貼るマテリアルを選択
  5. テクスチャファイルを指定

ということで、グループ編集を行うため編集ツールのグルーピングアイコンをクリックします。

グルーピングアイコン

グループ編集パレット すると箱全体が真っ赤になると思いますが、これは現在選択されているグループに含まれているポリゴン(面の採取単位)が赤く表示されるためで、デフォルトのポリゴンのグループが箱全体を含んでいることを示しています。グループ編集(ポリゴン)と表示されたパレットウィンドウがあるはずですが、最初に行うことは「新規グループ」ボタンを押すことです。新規グループボタンを押すとダイアログが表示され、これから作成するグループの名前を聞いていきます。日本語の名称をグループに与えても良いのですが、ちょっと訳あって後々のために英数字で指定する癖をつけることをお勧めします。今回は「side」と入力しました。グループ編集パレットを見るとこのスクリーショットのように、今入力した名前が表示されているはずです。と同時に箱全体が黒く表示されているはずです。黒くなっているのは、現在作業中のグループにポリゴンが無い証拠です。ここからビルの側面にあたる部分のポリゴンをグループに含めていきます。

グループ編集 グループにポリゴンを登録していくには、登録するポリゴンをクリックするかラバーバンド、マウスでドラッグすると白い四角形が現れるので、それを使って一括して囲い込みをします。グループにポリゴンが含まれると、そのポリゴンは赤く表示されます。もし間違って違うポリゴンが含まれてしまったときには、グループ編集パレットにある□の中に−のアイコンのボタン、選択解除ボタンをクリックしてから、グループから削除したいポリゴンをクリックして取り除くことができます。詳しい操作方法は、リファレンスマニュアルの第14章に任せて、ここでは話を先に進めていきます。

必要なポリゴンが全て含まれたら、次はこのグループをマテリアル化します。つまり今作成した「side」グループから新規にマテリアルを作成し、そのマテリアルにテクスチャを貼ろうという寸法です。

新しいマテリアルを作成するには、赤いポリゴンが正しく表示されている状態で、グループ編集パレットにある「新規マテリアルとして作成」ボタンを押します。するとダイアログが表示され作成するマテリアルの名称の入力を求められます。今回は「側面」と命名しました。後は正面のテクスチャを貼ったときと同じようにマテリアルルームで作業します。

完成したビル マテリアルルームに入って、箱オブジェクトのマテリアルをポップアップメニューで確認すると、これまでのマテリアル「プレビュー」に加え、先ほどの作業で作成した「側面」が増えています。側面マテリアルを選択して、正面のときと同様にイメージマップノードを作成して側面用のテクスチャを設定します。側面のテクスチャが正しく設定されれば、ビルの完成です。

背景と床

背景の設定 適当な写真を探し出してきて背景に貼り込みます。背景という特別なオブジェクトがありますので、それにビルの時と同じように作業をして、テクスチャの設定をします。背景オブジェクトには、BGピクチャというノードが既にあるので、そのノードのソースに背景となるテクスチャを指定します。そして背景のカラーとBGピクチャを連結します。

背景のカラーには、すでにBGカラーが接続されていますが、連結先を変更するにはカラー属性の右端にあるプラグアイコンのところでマウスボタンを押し、そのまま押し続けます。マウスボタンを押しながらマウスを移動させると、白い紐が表示されますので、その紐をBGピクチャのウィンドウタイトル左端にあるプラグアイコンに接続しマウスボタンを離します。正しく接続されたなら、右の図のようになっているはずです。

後は、BGピクチャの属性を操作して、自然な感じに見えるようにテクスチャの位置や大きさを調整します。大きさは拡大縮小の値で調整、位置はオフセットの値で調整します。UとVは座標のことで、Uが水平方向でVが垂直方向になります。

床はデフォルトで用意されているものを使いました。床オブジェクトは小道具として既に空間に配置されています。とはいえ、そのままでは影ができるものの、透明な床になってしまいます。床をレンダリングで表示させるには、2つの属性を設定します。一つはポーズルームで、特性パレットで表示属性にチェックが入っていること。もう一つはマテリアルルームで、床オブジェクトの「Poserサーフェース」にある「影のみを受ける」属性のチェックを外すことです。その上で、すでに用意されているイメージマップを床の拡散色として連結すれば地面として表示されるようになります。

これでオブジェクトは全て空間に用意されました。

カメラとライト

カメラとライトは全く別の機能ですが、実際の作業では一連の作業の中で使うことになると思います。カメラアングルを調整しては照明を調整するということを繰り返し行って作品を仕上げていくことになります。もちろん、ポーズの仕上げもこの中で行うことになるでしょう。

最初にやるべきことは、カメラアングルを決める事です。リファレンスマニュアルにも書かれていますが、カメラアングルをある程度決めないと、照明の位置を決めにくいのです。カメラアングルを決めるためには、オブジェクトの位置やキャラクタのポーズを調整する必要があるかもしれません。この作業は実際の撮影に似ています。どういった構図で撮影するのかを決め、セットを用意して、モデルにポーズを付け、照明の方法を最終的に決め、テスト撮影し、全体を調整し直して、本番の撮影。たった1枚の写真が撮られるまでの手間と行程は、実際には複雑です。しかし経験が積まれてくると、どのようなアングルで、どのような照明が、どのような効果をもたらすかを直感で判断できるようになります。ただ理論なしの経験はあまり意味が無いかもしれません。こうした経験の差が、フォトグラファーの腕前を決定している事は間違いありません。

3Dの空間を絵に撮るという点において、実際の撮影と3Dアプリケーションで作品製作をすることに何ら変わりありません。このことは、実際の技法がPoserでも利用できるという事です。Poserの本を探している場合ではありません。もし本格的な作品を作ろうと思うのなら、図書館に行ってカメラの本を読みあさるべきです。そうすれば、直ぐに私など足下にも及ばない作品を制作できるようになるに違いありません。もちろん理論と経験あっての直感ですから、経験も必要です。沢山の絵をレンダリングしてみてください。

本題に戻って作品をどういったアングルから撮るかを決めます。小人目線で巨人を見たときのことを想像しながら、カメラの位置決めをしていきます。通常水平線は、目の高さの位置と関係します。目の位置が高いと水平線の位置が高くなり、目の位置が低いと水平線の位置も低くなります。まるで目の位置を示すように絵の中に水平線があるようになります。建物の1階部分と比べて水平線が小人の目の高さになるよう、カメラアングルを調整していきます。この作品の場合、地面すれすれの低い位置にカメラの中心がきました。実物のカメラですと中心はカメラ本体のイメージがありますが、Poserでは論理的な中心、つまりレンズの中心になるイメージです。Poserでプレビュー画面にカメラを表示することも可能ですが、この作品でカメラを表示すると、カメラは地面にめり込んだ状態になります。それぐらい低い位置から撮影しなければ巨人のように見えないということです。

今回の作品では、ジェシーを本当の巨人に設定した訳ではないので、こうしたことになる訳ですが、ジェシーの設定を例えば50倍の巨人に設定すれば、カメラアングルは本当の巨人を撮影するのと同じ設定にする事ができます。しかし、今度はオブジェクトの配置が手間なので、今回はジェシーさんには巨大化してもらわずに、セットの中での撮影をしているイメージで作品を制作しています。このような場合にはカメラワークに色々と工夫が必要になりますが、巨大化させるよりは手っ取り早いのは本物と同じ(?)だと思います。

カメラコントロール カメラアングルを調整するには、カメラコントロールパレットを使いますが、まずカメラを選択する事から始めます。カメラを選択するには、カメラコントロールのアイコンをクリックするか、▼印をクリックしてポップアップメニューから選択します。詳しいカメラコントロールの使い方は、リファレンスマニュアルの「第8章カメラ」に詳しく書かれているので、そちらに任せることにして話を先に進めます。

カメラの種類の多さに驚くかもしれませんが、通常撮影に使うのは、メインカメラかサブカメラになります。他のカメラは、オブジェクトの位置やポーズを調整する時に、見る視点を変えるために使う特殊なカメラです。カメラの追加もできますので、いろいろなカメラを作って、例えば焦点距離の違うカメラを試すとか、まるでプロのフォトグラファーのような気分を味わうこと藻でします。

撮影するカメラを決めたら、カメラのパラメータを調整しながらアングルを決めていきます。カメラパラメータの調整は、ポーズのときにお世話になったパラメータパレットで行います。カメラのパラメータが表示されていないときには、パラメータパレットの▼印をクリックしてポップアップメニューから、調整するカメラを選択します。

パラメータでちょっといやらしいのは、「焦点距離」パラメータと「焦点_距離」パラメータの違いです。焦点距離は実際のレンズと同じ見える範囲の角度が変化します。数字が大きいと望遠レンズ、小さいと広角レンズということです。焦点_距離は、現在ピントがあっている場所を表しています。単位は環境設定によって違いますが、デフォルトですとフィートになります。「fストップ」は、レンズのF値です。カメラの知識はあった方が良いですね。

今回は巨人がテーマですので、広角レンズっぽく25mmの焦点距離でアングルを決めました。焦点_距離とfストップは、今回は無視します。無視できるのは、後で紹介するレンダリング設定の「被写界深度」をオフにするからです。被写界深度を無効にしてしまうと、全ての場所にピントが合います。本物のカメラや肉眼ではあり得ませんが、こうすることで、風景を撮ったような効果が得やすく巨大な感じが出るのです。後に作品をさらにリアルに仕上げていくときには、この被写界深度も有効にして、その効果をちゃんと活かしたアングルで撮り直そうと思います。

アングルが決まったら次はライトです。

デフォルトで3つのライトが配置されています。しかしこれを削除してしまいます。そしてライブラリのライト設定を利用して、さらに不要なライトを削除して最終的に2つだけのライトを配置します。一見面倒ですが、IBLの設定を楽に済ますには、この方法が一番だと思います。ライトコントロールの使い方は、リファレンスマニュアルの「第9章ライト」に詳しく書かれているので、そちらに任せることにして話を先に進めます。

IBLライト IBLライトについて簡単に説明します。右の絵は、ライブラリのライトカテゴリの中にあるIBLフォルダの一部です。今回利用するIBLの設定が含まれる「ラグーン減色」のサムネイルのアップです。見ての通り環境のテクスチャマップが含まれた特殊なライティングです。実際の世界ではライトや太陽の光源からだけ光が物体を照らしている訳でなく、その周囲からも光が回り込んで照らします。例えば屋外なら、光源は太陽だけしかありませんが、空や大地からも光が放たれて物体を照らします。こうした光を環境光と呼び、IBLはこの環境光を関連づけられたテクスチャを基に空間上のオブジェクト表面の色や明るさをシミュレートします。IBLについては、改めて実験しながら解説したいと思います。

IBLについて、もう一つだけ説明します。IBLライトの設定のコツです。最終的な作品を考えたとき、メインとなる巨人を取り巻く環境の色が、どんな色なのかを考えます。空は雲が多いけれど青空で、薄茶色の地面。この環境に似た色で探すと、ラグーン減色が一番近いからです。環境光ですから周囲の色で選んでいます。物体の後ろからの回り込みも考慮して選ぶと、同じ配色でも屋内のものは選びません。ちなみにIBLの名の入ったフォルダは複数あり、その中にも同じようなライト設定ファイルが見つかると思います。このフォルダの違うライト設定は、IBLライトの仕組みが代わる訳ではなく、単にライトの設定が違うだけです。この辺りの説明が、マニュアルでは不足なので、追々実験を兼ねて設定の違いや目的を追求していきたいと思います。

ラグーン減色を適用すると、4つのライトが設定されますが、そのうちのIBLだけを今回使います。これとは別にライトを用意して太陽に見立てます。ちょっと大胆ですが、真夏の演出とライトが多くなると説明がしにくい事もあり、2つだけのライティングでいきます。ですので、IBL以外は全部削除してしまいます。ポーズルームに入って、プレビューウィンドウ枠上部の左から2つ目の▼印を押してポップアップメニューで不要なライトを探して選択します。選択したらライトコントロールパネルのゴミ箱アイコンをクリックして削除します。IBLだけが残ったら、ライトコントロールパネルの太陽のようなアイコンをクリックしてライトを追加します。

パラメータパレットの一番上にある▼印をクリックして、追加したライトを選択します。このライトには太陽の役割になってもらいます。ちょっと乱暴ですがライト1のパラメータのうち、赤、緑、青の値を1にします。それからx軸回転を-90、y軸回転とz軸回転を0に設定します。と同時に、特性パレットの「影」属性と「環境閉塞」属性をオンにします。あと忘れずに「無限光」を選択しないと太陽のように光が降り注がななくなってしまいます。それから「レイトレース影」をオンにするとより夏らしくなりますが、影が強く出過ぎるのでレイトレース影を使うときにはパラメータパレットに戻って「影の濃度」の値を0.7とかに落としてやると良いでしょう。これで真上から白色の光が降り注いでいる状態です。これを元にして少し手前から光が注ぐように調整していきます。一方IBLのパラメータ「強度」を70%ぐらいに落とし、特性の「環境閉塞」をオンにします。IBLは環境光ですが、簡易なシミュレートなので、影はできません。環境閉塞はリアルさを追求するなら必須だと思っても間違いないです。

ライトコントロール 直感的にライトを動かせるライトコントロールや、ライトから物体を眺められるライトカメラなどを駆使して、位置を調整していきます。しかし最終的なライトの調整は、レンダリングを重ねて決めることになります。なぜならプレビュー画面とレンダリングの結果が同じになることは、まず無いので、レンダリングを行った後で調整が必要になるからです。

レンダリング

いよいよレンダリングです。レンダリングするとプレビューとは、大分違った印象になります。特にIBLライトを使っているときには変わります。

さて今回は環境閉塞を使っていますので、レイトレースによるレンダリングが必要です。メニューの「レンダリング」から「レンダリング設定」を選んで、レンダリング設定をします。デフォルトでFireFryの設定ページになっているので、まず「手動設定」に切り替えます。そして「レイトレーシング」にチェックを入れてオンにします。あと「スムーズポリゴン」にチェックを入れておきます。設定ができたなら「レンダリング開始」ボタンを押してレンダリングします。

レンダリングした結果が満足なら完成ですが、おそらく1回では満足できないでしょう。アングルやライト、その他のパラメータを修正して、満足がいくまで何度もレンダリングします。試しにレンダリングする時には「レイトレース影」をオフするなど、少しでもレンダリング速度を向上させる設定にした方がストレスを減らせます。他にも指定の半分のサイズでレンダリングするハーフや、変更した部分だけをレンダリングする部分レンダリング等も必要に応じて使い分けると作業効率がアップします。

まとめ

もっと細かく説明しようと試みましたが、あまり長いと書く方も読む方も大変なので、こんなところでしょうか。ちょっと駆け足での説明になってしまいました。Poserにどんな機能が備わっているか、基本的な所は眺めてもらえたと思います。退屈な所も多かったと思いますが、実際に作品を制作する過程が見えてくればと思います。

次は体や建物の形状に手を入れます。左下の作品が、その右のように、ちょっといい感じに仕上ってきたと思いますがいかがでしょうか。モーフを作成して利用する方法と、ディスプレイスメントマップを利用する方法について説明します。

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