草薙さん郵便です
両親から宿禰の下に送られてきたのは赤ちゃんだった。小包みに赤ちゃんを入れるとは、さすが宿禰(すくね)の親である。包みの中には、赤ちゃんと一緒に父からの手紙が一緒に入っていた。
やっほう息子よ元気でやってるかい?
いきなりだがお前の妹ができたんで送る!
名前は絢音(あやね)だ。
あとはよろしく。
父より
多少の事なら驚かない宿禰だったが、今回はがっくりとひざを落としてしまった。
「こんな小さな赤ちゃんが相手では口説くこともできないじゃないか!」
多少、論点が一般人と異なるところは、父子ともに同じである。やむなく妹を育てることにした宿禰だった。しかし、世話をしているうちにだんだんと情が移り、やがて宿禰は家族としての愛情を妹、絢音に注ぐのだった。それは兄としてというより、父としての愛情に近いものだった。
翌日、様子を見に来た紫苑(しおん)が見たものは、兄宿禰より大きくなった妹だった。大きくなったというよりも巨大化したと表現した方が正しいような成長ぶりだった。
さらに翌日、紫苑の予感は的中し、家よりも巨大になった妹絢音の姿がそこにあった。その巨大な体を別にすれば、無邪気でかわいい絢音だった。綾子とかくれんぼをするのは命がけだった。例えば家の中に隠れた助六は、家の屋根をはがされて見付けられ、木の陰に隠れていた紫苑はその気を引き抜かれて見つけられてしまった。そして森の中で隠れていた宿禰の場合は…
さらに翌日、絢音は頭が雲の上に出るほどの巨人になっていた。こうなると宿禰の声も絢音には届きそうもないくらい、絢音の頭は遥かな高みにあった。そして絢音の足の大きさは鹿子前町の1区画の大きさに匹敵し、絢音が歩くたびに街並みが消えていった。絢音が一歩踏み出すと、1丁目が壊滅。もう一歩踏み出すと、2丁目が壊滅。数歩歩いただけで、鹿子前町の大半が絢音の巨大な足の下敷きになってしまった。しかし絢音かわいさのあまり宿禰は何もしようとせず、全く頼りにはならなかった。
そこには現れたのは、紫苑の兄、柘榴(ざくろ)だった。柘榴は現れるや否や自分の発明品を取り出した。
その名も「みにみにくん」。
その発明とは何でも小さくする光線銃だった。早速、柘榴の発明品を借りて、宿禰は絢音に向かって光線銃を放った。ところが光線銃を使ったとたん宿禰の体が小さくなってしまった。実はこの光線銃使った本人が小さくなってしまうというとんでもない代物だったのだ・・・