誰かがやるとは思っていたが、ほんとにやってしまったという感のある作品です。
もともとは、同人誌で描いたネタ(ウルトラA子、ウルトラマン子)ですが、シリーズ化して雑誌に掲載された作品が、単行本 「ULTRA-M」としてまとめられました。ウルトラマンのパロディですが、巨大な全裸の女の子が戦うというのは当時としては前代未聞の設定でした。
同人誌では一話にまとめた読み切りモノでしたが、本作品はシリーズ化された話です。一応読み切りのスタイルはとっています。各話はパロディ仕立てになっていて、地球を狙う悪の支配者と対決する話になっています。サイズフェチな要素を持ったモスラはもちろんのこと、当時流行っていたナウシカのパロディなども盛り込まれています。パロディばかりではなく、純粋な百合ではありませんが巨大美少女対決なども盛り込まれています。
街が破壊されるのも構わず、巨大少女の二人が戦うのは強烈です。空振りした腕がビルを破壊したり、大きく股を開いて倒れ込んだ勢いでビルが破壊されてしまう様が、迫力ある絵で描かれています。背景の雰囲気は、一世を風靡した大友克洋のようでもあり、士郎正宗のようでもあります。
もろくも崩れさる最新技術を駆使した建物は、SF的要素でもありますが、この作品の本質は全くSFとは別なものであることは明白です。破壊的な力を持った彼女達の巨体で崩れる建物は、彼女達の素晴らしい肉体を表現するための小道具です。
怪獣が可愛い女の子だったら、正義の巨大ヒーローではなく巨大ヒロインだったらという思いが、この作品に詰め込まれています。描いた作者は、ちょっと面白そうぐらいのネタだったかもしれませんが、丁寧に描かれた絵は情報量が多く、読み手が色々と妄想する余地がそこに生まれてくるのです。
破壊される街並に立つビルは、沢山の男達の汗と努力の象徴であるかもしれませんし、男そのものの象徴かもしれません。また可愛い女の子を助けたくても助けられない、人類の小ささとも捉えられるかもしれません。街中にそびえ立つ巨大な建造物も、巨大少女達には、邪魔な箱物でしかありません。足下を走る自動車は、おもちゃです。実際、足下にいたタンクローリーが乗務しているドライバーごと、彼女たちのおもちゃとして使役されてしまいます。巨大少女の中に押し込まれる表現は、非常に印象的です。
追加情報として、本作品以外に裸の巨大な女の子が戦う話としては、「戦え!ゆかりちゃん」という作品があります。