ヤンキーフィギュア

山下筆児は、気が弱い典型的なオタク少年。高校生になっても関心事はフィギュアばかり。実際の女の子となると言葉も交わせない。友達と言えるのは、学校校内で密かに世話している黒猫のニャースケだけ。そんな弱く正しく生きる筆児の平凡な日々に終止符を打つ事件が。

校舎裏で不良に絡まれた筆児。普段と違ったのは、そこに桜井さくらが現れたこと。彼女は昼寝を邪魔され少々機嫌が悪かった。騒いでいた不良にひと蹴り加えると、さくらを見た不良はそそくさと退散してしまった。さくらは誰もが知る最強のヤンキーなのだ。

ところが助けられた筆児がお礼も言うこともできずにいると、さくらの怒りは筆児に向き、見事なひと蹴りが決まった。そのとき、黒猫のニャースケが筆児とさくらに不思議な衝撃を与えたのだ。２人が気がつくと、さくらの体がフィギュアのような大きさに。突如、さくらの色気に気がつく筆児に、小さなさくらが見事なひと蹴りを決めた。小さくなってもさくらの強さに陰りはなかった。

このようにして小さくされたさくらは、張本人の黒猫にも逃げられて、筆児と不思議な生活が始まったのだった。また筆児以外の人間が触れると体が硬直して、本当のフィギュアのようになっていまうことも分かった。筆児とさくらは元に戻る方法を探すのだが、奇妙な２人には次々とハプニングが襲いかかるのだった。

一昔前の決まりきったパターンを毎回周到するタイプのマンガ作品です。と書いてしまうと誤解が生じますが、テンポも良く小気味よくまとまったストーリーは、分かっていながらも笑ってしまう、さながら吉本新喜劇のような面白さがあります。

毎度の決まり事は、ヒロインの服が脱げてしまうこと。そして、さくらの怒りが筆児に向けられること。一応少年誌の連載作品ですから、それ相応のエッチ度で作者の品性が、かろうじて疑われないような構成ではありましたが、そこがまた魅力として成り立っています。

そうしたお約束ハプニングは、見た目小さなフィギュアという特徴を良く物語るエピソードにもなっています。見てくれこそ可愛らしい人形の服を着た美少女フィギュア。ですが、さくらは無敵のヤンキー少女。小さいとはいえ、オタク少年代表格の筆児がかなう訳もなく、筆児は尻に敷かれた状態。もちろん無理矢理脱がすというシチュエーションはありません。残念。ですが無理矢理脱がせることもなく、なぜか脱がされる事件や事故が次々とさくらを襲うという案配なので、残念かどうかは読んでのお楽しみとしてください。

そんな脱がされ役のヒロインは、ナイスバディ（死語）の美少女さくら。しかしその大きさは、フィギュアサイズ。本来なら迫力満点のボディのさくらが、オタク好みのフィギュアサイズ。筆児にとっては、むしろツボに入った最高のボディ。等身大のさくらより、色気を感じているようです。

ところで、いつも小さなさくらですが、ちゃんとサービスエピソードもありました。なぜか突如巨大化して現れるさくら。巨大化して等身大になるのではなく、ビルよりも大きな巨人となって現れるエピソードも用意されています。

小さくてもふくよかなさくらの体が、大迫力で空にそびえ立っています。筆児でなくてもびっくり。小さくても強いのですから、巨大なさくらは無敵の巨人です。

なんで、こんなに巨大になってしまったのかは読んだ方の特権ということで、ここでは内緒にしておきます。が、作者の意図は別にして良い目の保養となったのは、筆児だけではない改心の一撃でした。

こうしたサイズフェチ要素満載の作品は、作家のエネルギーを奪うのでしょうか。多くの新人作家が、こうした作品を書き上げた後、次の作品を発表できなくなるジンクスがあります。特にデビュー作品や、デビュー直後にこうした作品を発表して、才能ありながらも消えた作家は数知れません。

このミッチェル田中氏もそうした運命を辿ったかのように思われましたが、ジンクスを打破したようで「ニボシ君の変態」という作品を月刊少年チャンピオンで掲載、先日（2013年9月）単行本（左図参照）も出ました。

表紙からして気になる構図ですが、実際本編でもニボシ君が小さな小人として表現されることもあります。是非チェックしてみてください。

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