MINI

「とっても大きな女の子」

Shona Joshua 作品

あらすじ

真夏の堆肥祭りの夜のこと、街中が祭りに酔いしれているとき、遥か地平線の彼方から巨大な影が街に近づいていた。その巨大な影は街の入口に立ち、人々の遥か頭上から大きな声で言った。

「もう、お腹がぺこぺこ!」

街中の人々が驚き見上げると、そこには身長が15mはあろうかという巨大な女の子が人々を見下していた。そのとっても大きな女の子の名前はミニといった。

「静かにしてくれ!今、わしが演説しているとこなんだぞ!」

驚いてミニを見上げる群衆をかき分けて、前に進み出た小太りの男がいた。彼は街でバーガーマスターと呼ばれた男で、ちょうど彼が演説をしようとしたとき、ミニがそれを邪魔した形になったのだ。彼女は、その大きな手でバーガーマスターをつまみ揚げると、一口に食べてしまった。それだけではなく、彼女は大きな袋の口を広げて、片っ端から人々を放り込んでいったのだった。

ちょうどそこに、家の窓から一人の男が飛び出してきた。その男はミニの足もとに出てきた格好になったのだが、ミニは巨大な足を器用に使って、その男を足の指で挟んで捕まえてしまった。無論、その男もミニの巨大な袋に詰め込まれてしまったのだった。

その男は泥棒で、ちょうど仕事を済ませて家の外に出たところが、ミニの足もとだったのだ。彼は真っ暗な袋の中で短剣を取りだすと、巨大な袋の底を割いた。そして袋から見事に脱出したのだった。脱出した後、彼は少し余裕が出て、ミニに見つかっていないことを確認すると、持ち前の好奇心を発揮して物陰に潜んでミニが何をするのかを見ていた。

ミニは着替えを済ますと、袋から一人つまみあげてジャムの瓶につけたかと思うと、巨大なパンに挟んで食べてしまったのだった。あまりの恐ろしさに男の好奇心はしぼみ、その場を逃げ出そうとした時、小枝を踏みつけてしまった。ミニはその音を聞き逃すことはなかった。ミニは男を捕まえると、先ほど人を食べたときと同じように、男をジャムにつけパンに挟んだのだった。

朝を迎えた街は、昨日とは様変わりしていた。ミニが街の建物の多くを破壊してしまったのだ。人々は街の復旧に取りかかっていた。そこに男が現れた。ミニに捕えられたはずの泥棒だ。男が無事に戻れたことを素直に喜ぶ街の人々。しかし、驚くべきことはそれだけではなかった。その男はミニを連れてきて、街の復旧作業をミニに行わせ始めたのだった・・・

解説

Anartic Press 社はアメコミにおいて、巨大女性というカテゴリーを確立した出版社で、この出版社から出された巨大女性関連の出版物には、Femforce シリーズ、Silbaster などがあります。Femforceシリーズは、GTSという言葉を生み出し、熱狂的なファンを生み出したシリーズ作品です。

ところで、Silbaster はもともと日本のもので、雑誌ポプリクラブに連載されたマンガ作品シルバスターの英訳版です。佐原一光氏の作品で、同名の同人誌として全5巻で販売されましたことは、佐原氏のファンであればよくご存知のことだと思います。そうした日本マンガのアメリカ国内への輸入に力を入れている Anartic Press 社が発行した MANGAZINE は、マンガの表現手法を取り入れたアメコミ作品で構成された雑誌です。

さて巨人というのは、その存在自体が人間社会の驚異になることが多く、この作品でも巨人が人間社会に対し天災のごとく振る舞う様が描かれています。それに加えて、かわいい女の子が巨人として振る舞う様は、怪獣ものを彷彿させる男の巨人とは、一味違うものを感じさせてくれます。こうした巨大な女の子というのは、大抵は突拍子もないオチとして登場することがほとんどです。しかしこの作品のように冒頭から登場する場合には、何かの象徴として描かれることが多いようです。

巨大女性ファンにとっての巨大女性は単純な象徴ではないようで、細かい設定により象徴しているものが異なります。この作品の場合は巨人が小人を食べてしまうというシチュエーションを持ち込み、食人主義を超えた存在としての巨大女性が描かれています。つまり巨大女性に対する人間は、その人間としての価値はただの食物としてでしかなくなるのです。そして人間の側からこの関係を考えるなら、何だか人間が野生の豚にでもなったような感じがするのですが、いかがでしょうか。

記事公開日:2000.04.09
記事更新日:2004.09.18

MANGAZINE 《Vol.2・No.10》

販売出版 Antarctic Press
初版 1991年7月
価格 2.25ドル
サイズ B5・中綴

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