くあTOROのトワイライトゾーン

逃避行

くあTORO 作品

あらすじ

お嬢様はあの事件以来、多少不安定になられてしまいました。

お嬢様を守るのが俺の役目。そして敵討ち。敵を探しだすのにどれほどの時間が過ぎただろうか。長かったとしか言い様がない。そうした思いがよぎる中、お嬢様が敵の陰茎を切り取っていた。

「ちんぽー。みんな、ちんぽーだよ。」

あの日から情緒不安定だったが、さらにひどくなったようだ。無理もない。どれほど憎んだ相手だったろうと、人を殺してしまったのだから。おや。俺も頭をやられたのか、すれ違う人が異質なものに見えるようになってきた。それも後少しの辛抱だ。お嬢さんを列車に乗せて、それから…

「たかが強姦魔を殺したぐらいで、なぜ自殺せねばならないのです?」

列車に乗ったお嬢様は突然正気に返った。その時俺の周りにはミニチュアの街が出現した・・・

解説

当時、作家本人の心境が作品化されたものが、数多く見受けられました。そうしたもののほとんどが、自分の心境を架空の世界観というオブラートに包んで、判りにくい作品にしていました。それでもメッセージは非常に直感的で直接的なものが多く、この作品もそうした作品のひとつだと思います。

くあTORO氏の不条理世界。不条理だから何でも有りという訳ではないのでしょうが、やはり作者のイメージが中心となった世界観や表現についていけない方も多いでしょう。この作品では不条理世界を作りだしたのは少女で、それは現実からの逃避から生まれたものだったというありがちな設定です。こういった作品を設定だけで評価するのはどうかと思います。不条理世界の表現やそこへ読者を引っ張り込む手法が評価されるべきなのだと思います。

さて、この作品の描写は巨人ではなく、お嬢様の作り出した世界が小さなものだったということを考えると、果たしてここに掲載するべき作品かどうかを問われることになるでしょう。しかし、こうした描写は相対的なもので、自分たちより弱い存在であってほしいという願望が、結果的にこういった表現になったのだと思います。もし強い存在になりたいという願望であったなら、街は普通の大きさで、自分たちが巨人となって現れたに違いありません。そうしたことを考えると、単なるミニチュアではないことが判ります。ここに表現されているのは縮小された世界であり、それは小人の住む街並みであるはずです。

記事公開日:2000.06.30
記事更新日:2004.09.17

漫画ブリッコ 《1985年1月号》

発行 白夜書房
初版 1985年1月1日
雑誌コード 雑誌08665-1
価格 定価500円
サイズ A5・平綴

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