わが愛しのガリバー

原題:Voyages of a Mile-High Fille de Joie

原作:ジュディス・J・シャーウィン
翻訳:稲葉明雄
挿絵:エリザベス・ベネット

作品内容

すこし大げさな例かもしれないけれど、身の丈千メートル近い女性がちっぽけな白鼠と夫婦になったとして、はたして幸福が得られるものだろうか?(作品冒頭より引用)

彼とはじめて出会ったとき、ささやかな海難事故で打ち上げられた直後だった。身の丈5センチそこそこ、まるで女の子のほしがる最高の玩具といった感じだった。

小さいながら彼はことあるごとに、雄々しさを証明してみせてくれた。実際、彼は大きさを別にすれば、完璧な男だった。骨がないのに固くなる部分も完璧だった。その部分を思いのままにできる快楽のためには、父や母の口うるささも忍耐することができた。

王様の宮殿にのぼってからも、彼を思うがままにして楽しんだ。明るい光のもとで、小さいながらも完璧な彼の全身をつぶさに観察するのは面白い遊びだった。姉や妹も、あの愛らしい器官を人差し指の上にのせて楽しんだことも度々だった。まったく無害な玩具なので、まだ年端のいかない感じやすい女の子でも、おそれることなく、それは恥じらいつつ萎えしぼんでゆくさまを観察することができるのだった。

自分たちが図体こそ巨大だが無邪気な少女たちなのだと、信じ込ませることができて、私たちの肉体におしつぶされる危険が無いことを知ると、彼は自分からすすんで積極的に動くようになった。わが戦士は探検の版図をしだいに遠方へと広げてゆき、お臍へ剣呑きわまる踏査行にでかけたりするようになった。

当然のことながら、彼の操を奪う特典は私にゆだねられた。私はベッドに腹部を上にして寝そべると、胴着やコルセットのたぐいを脱ぎ捨てた。密やかな足音につづいて、私の身体の上で左右にころがる彼の小さな肉体。あの雄々しいものの微妙な感触。彼は胸から腹を通りすぎて、さらに下へ下へと降り、森林におわれた襞のほうへと滑降をつづけてゆく。用意周到に私の髪の毛を編んだロープにすがりながらも、湿潤した部分のむんむんとする熱気におしひしがれそうだと抗弁した・・・ついに彼は思いきって、私の中心部へ分け入ろうと決心した・・・私たちは彼を見失ってしまった。あまりの熱気に帰り道を確保するためのロープを彼が手放してしまったからである・・・助産婦の指示に従って細心の注意を払って指で探索をおこなったあげく、ようやく彼を外に引きずり出すことができた・・・

解説

ガリバー旅行記の大人国の少女の目線から、ガリバーとの愛の日々が細やかに描かれた短編小説です。PLAYBOY誌の年間最優秀新人賞を受賞した作品として米国本誌で掲載された後、日本でも翻訳されて掲載された作品です。

物語の前半では、当初性具として扱われたガリバーが、いかに精力的に女性の肉体探検を行うようになったかが描かれています。少女たちに成人した男性の威厳を認めてもらえず悩みながらも、だんだんと少しずつ調教されていくガリバー。しかしガリバー自身も全く強制される訳でなく、その流れの中で巨大な少女たちとの快楽を見いだしていく様が見て取れます。巨人と小人の行為ですから、小人に体力的な歩も無く、やがてガリバーの体力は疲弊します。作品の中盤では、それとともにホームシックになるガリバーを見て主人公の少女が心を通わせ始めます。そしてとうとう少女は、ガリバーとともにガリバーの国で暮らすことを決心するのです。

物語の後半は、アイルランドに上陸した彼女が、巨人としていかにガリバーとの性生活を送ったかが描かれています。ガリバーが大人国で見せ物にされた様に、今度は少女が巨人の肉体を見せ物にします。けなげにも、小人たちにあられもない肉体の奥深くまで探検させたりもします。それでもなおガリバーを愛している少女。しかしそんな生活が長続きする訳がありません。物語は終局に向かって動き出します。

しかしそれで終わる物語ではありません。意外なガリバーの運命が、この物語の終わりに待っています。それが愛情からくるものであることは間違いありません。しかし巨人の少女の愛が、男としてのガリバーに向けられたものであるのか、性具としてのガリバーに向けられたものであるのかは、私には理解できませんでした。短編ですが、非常に濃密な作品です。

ガリバー旅行記との比較

この物語はガリバーと巨人の女性との色艶事を終始徹して描いています。しかし全くガリバー旅行記とかけ離れた創作ということでも無いのです。

ガリバーは大人国で王妃に召し抱えられますが、宮廷の女官達がガリバーを玩具として扱う下りがガリバー旅行記にはあります。女官たちが自分の巨大な胸にガリバーを股がらせたり、巨人の女性達におもちゃ扱いされる様が書かれているのです。その上、単に人形として扱うだけでなく、ガリバーが性具として扱われたように匂わせる記述もあります。また女官たちがガリバーの目の前で裸体をさらけ出すのは当たり前で、加えて大樽2つぶんの排泄をして見せるなど、女官たちがガリバーを男として見ていない様を描いています。

ガリバー旅行記のこの部分が、この作品に大きな影響を与えた事は間違いなく、あながち大それた解釈をしている訳ではないことを示しています。

ガリバー旅行記をきちんと読みたいのであれば、次の本をお薦めします。

ガリヴァー旅行記

また大人向けの面白い視点でガリバー旅行記を解説した定番とも言える本がありますので、併せて読んでいただければさらに楽しめる事と思います。

あなたの知らないガリバー旅行記

記事公開日:2007.08.08
記事更新日:2007.08.09

PLAYBOY日本版 No.33

発行 集英社
発行日 1978年3月1日
価格 420円
サイズ A4・中綴
雑誌コード 7717-3

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