何故この2人が巨人なのかはZERRY藤尾らしい読者を困惑させる設定であるので深くは触れないでおきます。こうした説明抜きのシチュエーションに、いきなり読者を放り込むのはZERRY藤尾の作風なのです。巨人の女の子が小さな人間の街にやってきて普通に振る舞うことの不自然さを理屈抜きに楽しむことが肝心なのです。
人間にとっては凶器の存在であるはずの巨人が、どこにでもいる女の子のように振る舞う様は、なかなかどうして、それだけで楽しいじゃありませんか。しかも巨大なボディを見せつけるような水着姿で、まるで砂浜を歩いているかのように振る舞います。少年が登場するまでの間は、巨人の少女の独壇場なのです。
巨大少女に対応するためにあたふたとする人々に対し、一方の巨大少女は騒ぎなど知らぬ顔でビル街をぶらつきます。困惑する自衛隊との会話、自衛官の上官と部下の会話、アナウンサーと解説者の会話、TVレポーターと市民の会話、どことなくかみあわないこれらの会話が面白く、また巨大少女の存在を盛り上げるのに一役買っています。
特に暴れる訳ではなく、衆目にさらされている状況を気にしない巨大少女。そんな静かな状況であるので、野次馬が大勢やってくることになる訳です。読者はその野次馬の一人に加わったような錯覚を楽しみながら、巨大少女の行方を見守るよう構成されています。
このあと巨大少年が登場して喧嘩になるのですが、2人が巨大であることを除けば普通の痴話げんか。もし2人が巨人でなければ、たわいのないありふれた話であり話の進行も予想通りなので安心して読めるエロマンガ(!)ということになります。
それまで静かだった2人の巨人ですが、エロマンガらしい展開で多少の乱暴がはいる訳です。巨人たちにとっては多少手荒いことが、小さな人間にとっては大災害。ところがHな行動へと繫がる大災害なので、巻き込まれた野次馬も大興奮、盛り上がるといった次第です。
小さな人間が、無邪気な巨人に翻弄される雰囲気は「ちるどれん」にも似ています。がしかし、ちるどれんが登場人物などを良く知った読者が読む番外編であるので、ミステリアスな雰囲気はありません。そうして考えると、ミステリアスなところがアダルトな雰囲気を醸し出すはずが結局コミカルに終えたと言うことで、ZERRY藤尾の作風が完結している作品です。