大江は、まじめだった。
体感ゲームが本当に問題かどうかを自分の目で確かめなくては気が済まなかった。そうして大江は、学校の承諾を得て体感ゲーム「ドリームガール」を偵察しに来てたのだった。
そう、大江の職業は高校教師。しかも生徒指導担当で生徒にかなり厳しい先生として通っていた。しかし、一方的に生徒を叱りつけるタイプではなかった。そうした性格から、職員会議で問題になったこのゲームを自分で体感するべくゲームセンターにやってきたのだった。
ドリームガールとは架空の娘を育てるゲームで、育て方によって変化する娘を楽しむゲームだった。大江はバーチャルマシンのヘッドセットをつけ、ゲームの世界に入っていった。娘の名前はモモコにした。
驚いた、これが噂の体感ゲームか? それが体感ゲームに対する大江の第一印象だった。
驚く大江の前にモモコが現れた。さらに驚く大江。どう見てもプログラムに思えない。なるほどこれでは、男子生徒は一発でとりこになるだろう。モモコの今月のスケジュールを決めるのは親である大江の役目だった。学校で何を先行させるのか、クラブ活動は何を選ぶのか、進学塾に通わせるかそれとも情操教育に力を入れるのか、そういったことで娘の性格が変わり将来も変化するというゲームだった。
大江は、まじめだった。
学校は神学校、クラブは体育系、進学塾に通わせ、早朝マラソン。そしてとうとう、大江のあまりに厳しい教育に、モモコは家出してしまったのだった・・・