「あばしり一家」という作品は、青少年のモラル上よくないマンガのやり玉に挙げられて、悪書のらく印を押されたことがあります。しかし歳月が流れ、改めて見ると悪書というほどのものでもないように思えるのは、近年の作品の過激さが恒常化しているせいでしょうか。もっとも手塚治虫氏のマンガも悪書のらく印を押されたことを考えると、当時の悪書のやり玉はまんが本そのものだったとも言えます。
この法印大子という存在は、非常に魅力的に描かれています。実に人間離れしているにもかかわらず、魅力的です。彼女の身長は、初登場の「吉三の美人地獄編」ですでに3mを越える。これだけでも人間離れしている。しかし驚くのは早い。彼女は最終回「法印大子の巻」で再登場を果たした時にはなんと、マジンガーZよりも大きくなってしまうのです。その巨大な体でビル街を闊歩する有り様は、迫力ありすぎ。身長についてはっきりとした記述はありませんが、ビルよりも大きく、ゴエモンが寄生虫のように大子の体の中で生活できるほどの大きさには驚くばかりです。
さすがは永井豪氏。これだけじゃ済まない。得意な下品きわまりない話に突入していく。法印大子に下剤を飲ませて、巨大便器にまたがらせてしまうなど描きたい放題。しかも巨大なお尻から出てくる巨大便をあばしり一家は便器の中で待ち受けるのです。上を見上げれば、天井のような法印大子のお尻。いや、驚きです。もっともスカトロネタは、巨人ものの話においては昔話〜古典〜現代と、受け継がれている歴史的なネタで、こういった話をかのスィフト氏もガリバー旅行記で書いています。ですから、実はそんなに突拍子も無い話という訳でもないのです。それでも、天井のようなお尻から出てくる大便の描写は、凄まじいとしか言い様がありません。
さて、この単行本の巻末の付録は「女番長ほういん大子」です。もちろん主人公は法印大子。小学校時代に、すでに2Mをこえる身長の彼女の学校生活が、ノリに乗ったペンさばきで書かれています。