私の名前はちよみ。そしてこれがボーイフレンドの南くんです。
ちよみはある日突然、人の手のひらに乗ることができるぐらいの大きさに小さくなってしまいました。そしてボーイフレンドの南くんの家の猫に捕まえられて、南くんの家に連れられてきたのです。でも、小さくなったちよみは家には帰りたがらず、そのまま人目を避けて南くんと一緒にいることを望んだのでした。そして、新しい生活を始めた二人は、誰にも相談できない悩みを抱えるのでした・・・
私の名前はちよみ。そしてこれがボーイフレンドの南くんです。
ちよみはある日突然、人の手のひらに乗ることができるぐらいの大きさに小さくなってしまいました。そしてボーイフレンドの南くんの家の猫に捕まえられて、南くんの家に連れられてきたのです。でも、小さくなったちよみは家には帰りたがらず、そのまま人目を避けて南くんと一緒にいることを望んだのでした。そして、新しい生活を始めた二人は、誰にも相談できない悩みを抱えるのでした・・・
お気づきの方も多いと思います。この作品は読み切り作品として書かれ、後に連載されて「南君の恋人」としてまとめられた作品です。南君の恋人については、別の作品として改めて紹介したいと思います。
この作品は唐突に始まります。いきなり小美人の登場と相成るわけです。読み切りなのでプロローグをもたもたと書いているページが無かったからなのでしょうが、そこがこの作品に読者を引き込む力になっています。手のひらの上に乗る女の子が、男の子の家の人形の家に住んでいるというのは、とんでもなくインパクトがあります。それが、いきなり冒頭に出てくるのですから、強力な印象などというレベルではありません。
堅く切ない愛の形がこの作品にあります。この作品以降似たような設定を持った作品が次々と発表されていますが、この作品が今なお他の追従を許さないのは、南とちよみとの愛の形がはっきりと描かれているからです。
南は人形フェチなどではなく、受験勉強に追われるごく普通の高校生です。ちよみとの間はもともと親密で、その恋人が小さな体に突然なって苦悩しないわけがないのです。そして、小さくなったとはいえ年頃の女の子と一つ屋根の下で生活するのですから性欲が溜まらないわけがありません。ちよみもそれを察している上に性交渉を望んではいるのです。しかし普通の恋を望む二人は、この特殊な状況下においての肉体関係を持つことを我慢するのです。これは決してプラトニックラブなどではなく、恋愛の進展の結果としての性欲がそこにあるのです。そしてそうした思いも含めて、互いに愛し合い苦悩する姿が内田春菊氏らしい淡々とした展開でつづられています。
この作品は唐突に始まり、唐突に終わります。しかし、そこに描かれていないプロローグやエピローグを感じることができるような、不思議な作品です。
記事公開日:2000.12.24
記事更新日:2004.09.17
発行 | 秋田書店 |
発行日 | 昭和60年11月15日発行 |
雑誌コード | 雑誌27876-11/15 |
価格 | 定価450円 |
サイズ | A5・平綴 |
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