単行本「すっぽん物語」より
手塚治虫 作品
公開日:2000.02.02
更新日:2004.09.17
■あらすじ
日本は負けた。第二次世界大戦は、日本のポツダム宣言の受理、すなわち無条件降伏の受諾という形で終結した。昭和20年8月15日のことだった。
玉砕できなかった男は大勢いたが、この物語の主人公もその一人だ。彼が物語の主人公になったのは、負けの女神の水浴びを戦地で見てしまったからだ。
負けの女神は男の命を奪おうとしたが、もし、誰にも負けの女神の存在を話さないのなら命を奪うことまではしないと言い、男に誓わせた。
男は、負けの女神そっくりの女を見つけ夫婦になるが、やることなすこと失敗続き、心機一転出直すために離婚。すると、何もかもがうまくいき、男は大金持ちに・・・
しかし、男は別れた女房を忘れられずにいた。再び別れた女房に出会うことができ、再婚した男は・・・
■解説
手塚氏の発想の豊かさには、いつも驚かされてばかりです。この作品は、ラプカディオ・ハーン原作の雪女にインスパイアされて作成されていますが、原作とは全く異なる視点で作成されています。どちらかというと、モデルは座敷ワラシですね。
手塚氏の作品には、しばしば強い大きな女性が登場しますが、彼女らは家庭の主導権を握った主婦の象徴としての存在であることが多いようです。そこには手塚氏の家庭への考えや願望が含まれているようにも思えますしかも手塚氏の奥様は、こういった女性観とは異なる人柄で、作品に現れた女性像""は手塚氏の哲学者としての側面が描かせたものなのかもしれません。
この作品に登場する主人公と女神は、ありがちな日本人の姿を映しているように見えます。ところがその人生たるや波乱万丈。山あり谷あり。なかなか味わえないスリリングなもので、そうしたギャップが滑稽さを増しています。こうした日常に潜むスリルを描いた手塚氏の作品には、人間昆虫記やバルボラなどの名作がありあります。そうした名作に隠れてしまってはいるものの、この作品も奥深いテイストを持っています。これをナンセンスものと片付けてしまうのは、いかがなものでしょうか。
■すっぽん物語
[img]■すっぽん物語【手塚治虫漫画全集 67】
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