南九州の秘境、裔村を訪れた忠。この村を訪れたのは、消息を絶った恋人英理を探すためだった。
英理は九州の実家に帰ったきり、東京に戻らなかった。忠は、自分になんの連絡もなく、東京に戻らないことに不信を抱いていた。もちろん、英理の実家に電話で問い合わせた忠だが、埒が明かず、直接英理に会いたいという思いもあって裔村にまで来たのだった。
村に一件しかない宿に部屋をとり、忠は早速英理の実家に向かった。英理の母が応対してくれたが、門前払いに等しいものだった。そして、帰り際に忠の聞いたのは、土地の者と縁組が決まったという話だった。別の男と結婚…忠には信じられなかった。
宿に向かう忠の目の前に、山伏の面が空中に浮かんでいた。そして、忠に東京に帰れと言ってきた。これを見て忠は、英理の消息についてなにか秘密があると確信し、村を離れるどころか英理に会うまで離れない決意を固めた。
そして忠は伏田家の山に謎を解く鍵があるにちがいないことを確信し、山に入ろうとするが村人は誰も協力してくれなかった。いや、ひとりだけいた。分校の教員、松永だ。
松永は学校の備品であるキャンプ道具を忠に貸してくれたばかりか、ガイドをかって出てくれた。松永は道すがら、裔村に伝わる伝承を忠に話しながら山の奥へと入っていった。その夜、テントの外が妙に騒がしかった。松永は自然の現象だと言い、気にもとめない様子であったが、忠は何かの気配を感じ、ひとり起きてテントの外に出た。
山の中を何か気配を感じつつ、忠は進んでいった。そして大きな音が背後でし、振り返った忠は信じがたいものを見た。
英理だった。忠の持つ懐中電灯の先は徐々に上を向いてきった。そしてそこに信じがたい巨大な裸体を山の木々の上に見せている英理の姿が見つけた。英理の目はとても悲しそうに、忠のことを見下ろしていた。硬直してしまった忠をそのままに、英理はきびすを返すと山の奥に入っていった。忠は慌てて英理を追いかけたが、足を滑らせて谷に落ちてしまったのだった。
気がつくと、そこは鍾乳洞だった。周りには数は良くわからないが、大勢の人がいた。その中に、英理のお爺さんにあたる伏田英一博士がいた。忠の意識がしっかりすると英一は、伏田家の秘密について話始めた。