南くんの恋人

内田春菊 原作

あらすじ

悩み多き高校生、南は、幼なじみの堀切ちよみのことが好き。堀切は学校のアイドル的な存在、それに比べて南は目立たないもてない男。南は告白できずに今に至っている。堀切はそれを知ってか知らずか、南のことを兄弟のように面倒見ている。しかし、ちよみには付き合っている彼氏、中里がいるのだった。

堀切は最近中里のことが少し気に入らない。中里の目当ては、自分の体にしかないように思えたからだ。そんなある日、いつものように堀切が南に勉強を教えているとき、南が思い切って堀切に告白した。

そんな奇妙な三角関係がしばらく続いたが、中里が妙なことを仕組み堀切の気持ちを試したのだった。堀切は中里のことが好きだった。それなのに・・・

その日、南は両親がいないことを良しとして、堀切を家に誘った。下心見え見え。それでも堀切は承知した。堀切は自分の心が判らなくなっていた。承知したものの、まっすぐ南の家に行けずにいる堀切。ぼんやりと歩いている堀切。角を曲がるとの目の前にバイクが。それは中里のバイクだった。

中里は何かを見たような気がした。堀切は「はねられる!」と思った。その瞬間、堀切の身に不思議なことが起きた。バイクを止めて振り返るが、そこにはなにもなかった。

気を失ってしまった堀切が目を覚ますと、南に返すために持っていたハンカチが、まるで絨毯のように足下に広がっていた。

「え〜! うっそ〜!」

自分が小さくなってしまったことに気が付いた堀切。一方なかなか家にこない堀切を迎えに出ようと表に出た南。近所の路地を曲がろうとしたとき、堀切の声を聞いた。脇の側溝から聞こえる。南が覗き込むとそこには堀切が。そして二人の不思議な生活が始まったのだった・・・

解説

原作は内田春菊氏の「南くんの恋人」です。G-ZONEでは初出典の「悲しんだりもしたい」として紹介しています。

この作品は原作の雰囲気を非常に大切にしていながら、新しい解釈を元に作られた脚本は見事です。そのうえスタッフもキャストも、原作の雰囲気を保ちながら、新しい南と堀切を見事に表現してくれました。

当時、アイドルメインのドラマが数多く制作されましたが、石田ひかり氏をメインに制作されたこの作品も、その流れの中で作られたものです。さすがに石田氏は俳優らしく、しっかりとした演技をしており、他のアイドル系作品とは比較になりません。主演は工藤正貴氏で、それはまさに原作の南くんそのもののイメージです。また工藤氏と石田氏とのコンビネーションが素晴らしく、本当に二人が向き合って会話をしているように見えます。二人が絡むシーンは、ほとんどが特撮シーンになるわけですから、キャストはもちろんスタッフの労力も大変なものになります。それにもかかわらず、かなりの時間が特撮シーンに割り当てられています。それにその特撮も素晴らしく、工藤氏と石田氏の演技も相まって、自然な流れの中で特撮を意識せずに楽しむことが出来ます。

この作品は、高校生の性に焦点を当てて作成されています。原作も性について真っ向から向き合って取り上げていますが、この作品でも同じです。ただ視点を変えて、二人中心の世界から南を引き出し、ラブコメらしい要素を盛り込んで構成しています。

名作です。

記事公開日:2001.09.08
記事更新日:2004.09.17

ドラマチック22 - 南くんの恋人

制作 ギャラクシーワン、TBS
監督 原隆仁
脚本 斉藤博
出演 石田ひかり、工藤正貴
放送日 1990年4月28日(土)平成2年
放送時間 20:00〜23:54

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