お父さんは、家路を急いでいた。手には大きなリボンのかけられた箱。電車を乗り継ぐお父さんの手の中で、箱は不思議な光を放っていた。家に帰ると娘が迎え出てくれた。
今日は女の子の誕生日。女の子がお父さんを心待ちにするのは、お父さんと一緒に誕生日パーティーを過ごしたいからだけではなく、その手にあるお父さんからのプレゼントにもあった。そして楽しいパーティーが始まった。女の子がケーキのキャンドルを吹き消したとき、うさぎの時計が午後の7時をさしていた。
突然、うさぎが走り出し女の子のためのプレゼントを持って逃げ出した。女の子は取り返すため追いかけると、うさぎはおもちゃ箱の中に消えてしまった。女の子も追いかけておもちゃ箱の中に消えていった。
そこは不思議な世界だった。女の子がうさぎを追いかけるには合言葉が必要だった。
「わたしはアリス」
小さな部屋に入ると、女の子はみるみる大きくなって部屋の天井を突き破ってしまった。
大きくなった女の子は、しばらく街の中を歩き回るがなんだか悲しくなってしまった。泣き出した女の子の体は、こんどはみるみるうちに小さくなってしまった。小さな女の子の目の前に、大きな空き缶が。そう、女の子は空き缶より小さくなってしまっていたのだった。