夢少女ネムリ

犬木加奈子 作品

第1話 人形の館

戸井田には会社でやる仕事がなかった。机の中の不要な書類を片づけたところ机の中は空っぽになってしまいました。そして不思議なことが起こったのです。

戸井田が何気なく引き出しを開けるとそこには人形が、いや人形のような少女がいた。少女が引き出しから出ようとしたので慌てて引き出しを閉めた戸井田だった。

そこで目が覚めた。

夢を見ていたのだ。会社でやることの無い戸井田、家帰っても特にやることもない戸井田。彼は翌日出社すると引き出しの中に小さな人形の椅子を入れた。するとその夜、夢の中の小さな少女は引き出しの中で娘のおもちゃの椅子に座って現れた。だんだんとエスカレートしていく戸井田。引き出しの中は、人形の家具で埋まり、まるで部屋のようだった。

そんなある日のこと戸井田はバス停であの夢の中に現れる少女と会った。少女は現実にいたのだ。でも戸井田は、あれは夢の中だから何しても構わないと考えていたその時、その少女は戸井田に近づいてきた。

「もう変な夢、みるのやめてくれません!」

少女の言葉に驚きを隠せない戸井田だった・・・

第4話 半熟卵

夫婦生活は円満で実に満足のいく充実したものだった。そう、妻が妊娠するまでは。

それはつまり親としての自覚を持たなければいけないということで、私には出来そうもないことだった。妻との甘い生活をいつまでも続けられると思っていたことが本当に甘いことだった。

そんなある日、私は卵を産んだ。驚く私など気にもかけないように卵にひびが入りそして中からは小さな少女が出てきた。私は手のひらにその子を乗せ口移しに食べ物を与えた。食べ物を与えるたびに少女は大きくなり、やがて私よりも大きくなって、去っていこうとした。

そう、これは夢だった。私は夢でもいいから巨大になったその少女の手に乗りその巨大な胸に甘えるのだった・・・

解説

怪しい雰囲気を持った作風の犬木氏は、見事に大小の絡むシーンを描き上げています。一見ありがちな設定やありがちな絵柄ですが、じつによく計算された作風を身に付けている作家ですので、それを下地にして作られた作品は、読めば読むほど引き込まれていきます。

夢は願望の現れ。作品中のネムリのセリフです。深層意識とリンクされた夢は、願望をストレートに表現することはめったにありません。しかし、夢の中に巨人が出てきたときの欲求というのは、まさしく第4話のとおりなのです。巨人の表している象徴や本質というのは、まさしくその大きさにあり、それ以外の何ものでもないのです。

それでは、こびとの象徴する意味とは・・・こちらは、一筋縄ではいかないようです。

記事公開日:2000.03.13
記事更新日:2004.09.17

夢少女ネムリ

発行 講談社
初版 1999年6月9日
ISBNコード ISBN4-06-328239-2
定価 505円(税別)
サイズ B6・平綴
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