数少ない巨大化ヒロインメインの単行本です。
ところで気になった方もいると思いますが、タイトルではジャイアンテスターと表記されていますが、あらすじではジャイアンシスターと表記されています。実は作品中もジャイアンシスターと表記されているのです。それには秘密があります。が、物語の進行で明らかにされるので、解説は控えさせていただきますが、決して表記の乱れではありません。
巨大化ヒロインものは戦いが中心となるので、なにかと殺伐とした話になりがちです。ですが、このマンガでは絵柄のせいか雰囲気が和らいだ感じがします。本来なら殺伐としているシーンであるはずが、それほどでもない印象にすり替えられています。物足りないと思う方もいると思いますが、それが上藤政樹氏の魅力のひとつだと言えます。
黎明期の特撮ドラマのスタイルをそのままマンガ化したような作風は、上藤氏の得意とする所です。シリアスでありながら、それでいてどこか間の抜けたストーリーも当時のドラマにはありがちでした。相手は宇宙人なのですが、時には宇宙人に操られた地球人が相手になったりするところは、ウルトラセブンを彷彿とされます。が、そこは成人向けマンガ作品ですから、エロなしでは物語が進む訳がありません。それがまたコミカルな感じになるので、殺伐とした雰囲気にはなりません。
それでもテーマに地球防衛があり戦いがあるのですから、萌美の苦悩や葛藤も描かれている訳です。単純に能天気な話という訳でもありません。少し盛り込みすぎた感じも否定できなくはありませんが、単純なエロマンガにしたくないという作者の意図を感じます。
とはいえ、殺伐とした戦いだけではありません。ほのぼのとした話もあります。
子供達の前で、地球防衛と言う仕事がどのようなものかを教える話があります。子供達のリクエストに応えて巨大化もします。戦いはありませんから、単に巨大化してみせるだけのはずでした。が、ここでも萌美はいいようにされてしまいます。子供達に色々なところに潜り込まれてしまう巨大ヒロインですが、相手が子供なので耐えるだけの状態です。こういったシチュエーションは商業誌では他にありません。
ところで設定協力されているCallon氏は、当時ネット上で小説を発表していた方で、巨大娘界隈では名の通る方でした。Callon氏の書いた巨人族の少女が登場するファンタジー小説「エルフェの森」は読み応えのある小説で、私の中では今でも好きな物語の上位にランクインします。